シンポジウムオルガナイザーはつらいよ

私がオルガナイザーをつとめたシンポジウム「Analysis and forecasting of biodiversity and ecosystem processes: A contribution to GEO BON」が終了し、講演者と夕食をとりながら、ミニレビューの原稿をまとめる相談をして、ようやくホテルに戻ったところ。シンポジウムの講演をもとにミニレビューを書き、この10月に第一巻第一号が出版さればかりの新雑誌Current Opinion in Environmental Sustainabilityに投稿するように依頼を受けている。この新雑誌はElsevierのCurrent Opinion誌の新ファミリーであり、第一巻第一号には3月のClimate Congressのシンポジウムをもとに書かれたミニレビューが掲載されている。私も、生物多様性に関するミニレビューの著者に名前をつらねているが、このミニレビューでは筆頭著者ではなかったので、原稿を読んでコメントするだけでよかった。
今回は、原稿をとりまとめる立場である。そこで、講演者による会食をセットして、原稿の構成について相談したのだが、これがなかなかに大変な仕事だとわかった。会食に出席した講演者は、欠席したある講演者のビジョンに対する批判をするし、会食したメンバーどうしもそれそれに一家言があり、合意をとるのは容易ではない。また、生態系や生物多様性の変化は複雑なので、将来を予測するなんてもってのほかだ、そんなことはできっこない、と主張する論客が複数いて、困ってしまった。
長期モニタリングの重要性を書き込むが、一方で社会から予測を求められてもいるので、多くの不確定性はあっても、将来の生物多様性損失のリスクを評価しよう、Something is much more than nothingなどと主張して、何とか合意をとりつける努力をした。よもや、DIVERSITASのシンポジウムのとりまとめで、こんな苦労をするとは予想していなかった。どの世界にも、一家言ある人はいるものだ。
建前と本音が違うのは日本人の悪い癖で、そんな態度は欧米では通用しないと教わっていたが、この通説は、正しくないかもしれない。こちらの人でも、ごく普通に陰口を言う。
とはいえ、文化が違うことも事実だ。文化が違う人たちに納得してもらえるミニレビュー原稿を書かねばならない。これは難題だ。
結局、自分が妥当と思うメッセージを中心にすえて原稿を書き、共著者からコメントをもらって改訂するしかないだろう。しかし、なかなかに難しい仕事になりそうだ。