GEO BON Conference終了

今朝は5時に起きて、遺伝子レベルの生物多様性観測に関して、提案文書の改訂原稿を作った。提案文書には随所に穴があり、当然のことながら、さまざまな意見が出た。今日午後の総合討論では、何人もの参加者が「もっと時間をかけて議論すべきだ」と主張した。しかし、議長をつとめたBob Scholesは、「提案文書は今月中に完成させよう。これはあくまでも提案の概念をまとめた文書だ。この段階で議論に時間をとりたくない。まずスタートしよう。時間をかけた議論は、inplementationの文書でやろう。」という態度を貫いた。笑顔を絶やさず、批判的意見にはそれぞれに表現を変え、一見丁寧に対応しているように見せながら、実は一切妥協しなかった。いやはや、やり手である。水面下ではかなりの反発を招いていると見た。
私は、遺伝子レベルに関する知識がかわれて、提案文書改訂のためのサブグループ(interim group)メンバーに加わることになった。実際、遺伝子レベルのことがちゃんとわかるメンバーが他にいないように思う。長い文書を作るわけではないので、対応できるだろう。
遺伝子レベルの生物多様性観測は、GEO BONプロジェクトのメインではない。GEO BONプロジェクトのメインは、衛星画像などを使った生態系レベルの観測と、種の分布や増減に関する地上でのデータ収集をうまく結びつけるしくみ作りである。しかし、提案文書では、生態系レベル、種レベル、遺伝子レベルという3階層をカバーする必要がある。
GEO BONのミッションは、観測をになうのではなく、観測データをネットワーク化して、世界の誰もが利用できるデータベースにすることである。いわば、データを地球規模で吸い上げるしくみ作りが目標である。
自分たちは一切データをとらずに、他人・他機関がとったデータを吸い上げて、オープンアクセスのデータベースを作ろうという、見方次第では非常に傲慢なプロジェクトである。
3日間の議論を聞いてみて、ほんとにこんなプロジェクトが進むのだろうかとかなり不安になった。
しかし、レッドデータブックの場合も、さまざまな問題をかかえつつも、CR,EN,VUという3つのカテゴリーを適用して、世界中の全生物を評価する枠組みを作り、成功している。
とにもかくにも、まず国際的な枠組みをスタートさせるためには、Bob Scholesのように強固な意思を持つリーダーが必要だ。みんなそれがわかっているので、強引だと思いつつも、彼を支持して協力している。