中国製ギョーザ中毒事件(4)

ついに厚生労働省が「農薬とは考えにくい」(事件性がある)と認め、千葉、兵庫県警は殺人未遂容疑での共同捜査本部を設置した。これまで慎重に判断を避けてきたが、ここに至っては、「食品テロ」という疑いが濃厚となったと言って良いだろう。まずは一連の報道を要約する。

【新たに高濃度の「ジクロルボス」を検出、有機溶媒による汚染も】
中国「天洋食品」が製造した冷凍ギョーザ「CO・OP手作り餃子」(07年6月3日製)1袋から高濃度の有機リン系殺虫剤「ジクロルボス」が検出された。昨年11月11日、生協職員が「オイルのようなにおい」に気づいたため、日生協は輸入元の「ジェイティフーズ」に検査を依頼した。同社で「ガスクロマトグラフ検査」を実施した結果、11月20日にトルエン、キシレンベンゼンが検出された。この時点でも「ジェイティフーズ」が天洋食品を訪問し、問題の製造日の製造記録やサンプルを調査したが異常はなかった。また、類似の苦情が寄せられたのは東北地区だけであり、「段ボールに油染みがあった」との情報があったことから、流通経路での汚染とみて調査を終了していた。今回の中毒事件を受けて、この商品を検査したところ、ギョーザの皮から110ppm、具材から0.42ppmのジクロルボスが検出された。

重要なポイントを箇条書きにしておく。

  • 具材より皮の濃度が高いことから、ギョーザ製造後に外から薬剤をかけたと考えられる。
  • 天洋食品」製の冷凍ギョーザ、しかも一部の製造日の一部の製品に汚染が限定されていることから、「天洋食品」工場内での「いたずら」または「犯行」の可能性が高い。
  • 梱包材の油の染みや、兵庫で袋の外側からメタミドホスが検出されている事実から、梱包過程での事件である疑いがある。

次に、対策。

  • 天洋食品」以外の中国製品にまで不安を煽るべきではない。冷静な対応が必要である。繰り返し報道されている「天洋食品」の衛生管理は、非常に高い水準だった。
  • とくに、今回の事件を日中関係の悪化につなげる動きにブレーキをかけるべきだ。もし故意の「食品テロ」なら、日中関係を悪化させることこそが、その狙いかもしれない。たとえば大雪のために中国で多くの被害が出ていることをもっと報道して、日本として可能な援助をすることが大切だ。
  • 水際対策の強化が主張されているが、全数調査は無理なのだから、「食品テロ」は水際対策では防げない。異臭などの異常が確認された時点での対策を強化すべきだ。ガスクロでは揮発性の弱い薬剤は検出できない。有機リン系薬剤などの検出体制強化のために、設備投資をすることが重要。
  • 「食品テロ」への自衛策としては、自分の嗅覚・味覚に信頼を置くこと。進化を通じて獲得したヒトのセンサーは、非常に優秀である。いやな臭いや、変な味がするものを食べなければ、大部分の場合、命の危険は回避できる。