中国から帰国

杭州天目山に登り、浙江大学でのシンポジウムで講演したあと、11時55分に上海空港を発ち、2時ころに福岡空港に着いた。
中国がぐっと身近な国になった。たとえば天目山の植物を研究することを考えてみよう。朝に福岡空港を発てば、3時ころには天目山麓にたどりつき、その日のうちにフィールドワークにとりかかることが可能なのだ。西表島に出かけるのと、ほとんど変わらない。
天目山の植物相は、あまりにも南九州に似ていた。その類似性の高さは、予想を大きく上回るものがあった。北京植物園の裏手の二次林のほうが、日本との違いは大きい。
何しろ天目山には、スギ属のCryptomeria fortuneiの林がある。若木は「柳杉」という中国名のとおり、枝が垂れていて、日本のスギと少し印象が違う。しかし、成木になると、ほとんど違わない。
そして、スギ林の下に、サイゴクベニシダやオオイタチシダが生えており、テイカカズラ(いちおう別種として区別されている)がそこかしこに這い回っており、沢筋にはウリノキやマタタビ(これらもいちおう別種)。ヒヨドリバナもあれば、ヤブマオもあった(これらは同種)。
天目山と南九州の植物相の比較を、ぜひやってみたいものだ。
杭州市の中央には西湖という大きな湖があり、そのほとりのホテルに宿泊した。西湖の水は、濁ってはいるが、臭いはまったくない。船で遊覧をしたが、きわめて優雅で、快適だった。
湖の周りでは、夜10時すぎても、多くの人が散歩をしていた。若いカップルだけでなく、壮年・老年のカップルも多く、子供づれも目立った。市民は、とても豊かに暮らしているように思えた。
人民服には、ついに一度もお目にかからなかった。
女子学生は結構おしゃれをしていたし、みんな明るく、屈託がない。天目山からの帰路で隣の席にすわった学生は、i-podから音楽を選んで、聞かせてくれた。苦学生という印象の学生はまったく見かけなかった。それもそのはずで、大学院生は政府から支援されている。日本の大学院生はそのような支援を受けていないので、アルバイトをするのだというとびっくりしていた。
いま、中国は希望にみちた国である。今回を良い機会として、中国の研究者と交流を深めていきたい。
※中国でアップロードできなかった竹踊りの写真を、前回のブログに掲載しました。