ジャノメチョウとウラギンヒョウモンの比較

yahara2006-09-12

九大生物学科の野外実習では、8日間の実習のあとに、2日間の日程をとってデータをまとめ、ポスター発表をする。今日はその発表会だった。グループに分かれてデータをとったのは3日間だけなので、得られたデータは限られたものではあるが、それでも毎年新しい発見があって、面白い。
今年は、トラマルハナバチがなぜか激減していたため、トラマルハナバチを使った小グループ実習ができなかった。そこでやむなく、ツクシアザミの花に訪問するジャノメチョウ・ウラギンヒョウモン・ツマグロヒョウモンを小グループの研究テーマに出した。これら3種のチョウの観察をするのは、私にとっては初体験である。
まず、1日目は、朝から夕方まで、ツクシアザミの花に訪問する3種のチョウを片端からつかまえてマークし、個体識別をしたうえで、時間帯ごとの捕獲数や、再捕獲率の変化を調べた。午前中は曇っていたが、昼ころに一度、陽が射した。すると、ウラギンヒョウモンは活動が活発になり、捕獲数が増えたが、逆にジャノメチョウは捕獲数が減り、午後に曇ると捕獲数が再び増加した。どうやら、ウラギンヒョウモンは日光が好きだが、ジャノメチョウは日陰を好む習性があるようだ。
また、花あたりの滞在時間を比較すると、ウラギンヒョウモンはほとんど100秒未満だが、ジャノメチョウは100秒以上(ときには10分以上も)滞在することがわかった。要するに、ジャノメチョウはツクシアザミの花で、吸蜜するだけでなく、休憩するのである。
翌日は、雲が厚く、気温が低くて、訪花行動の観察は無理だった。そこで、ジャノメチョウ・ウラギンヒョウモン・ツマグロヒョウモンを捕獲してきて、私が宿泊している部屋に閉じ込め、エアコンの温度を操作して、温度に対する反応性を調べた。グラフは、部屋の温度が20度から26度に増加する間に、羽根を動かして活動している個体の割合がどう変化したかを示したグラフである。
ジャノメチョウ(グラフの青)は、温度の増加にまっさきに反応するのだが、そのあと活動個体の割合は減り、平均2割程度で推移した。一方のウラギンヒョウモン(ピンク)は、温度の増加にほぼ比例して、活動個体の割合が増え、最終的には8割をこえた。ツマグロヒョウモン(黄色)もウラギンヒョウモンに似た反応を示したが、ウラギンヒョウモンよりも温度増加への反応が早い。
どうしてこのような違いが見られるかについて、学生と一緒にあれこれと考えてみた。ジャノメチョウやヒョウモンチョウ類に親しみがわいた実習だった。

※また写真が小さくなった。7月後半は、サービス期間だったのだろう。