やんばるヘリパッド移設地の環境影響評価

3月25日付けで那覇防衛施設局長あてに、以下の文書を送った。意見は、私の個人名である。これから、委員会で書面協議にかける文案を用意しなければならない。

環境影響評価書に相当する「環境影響評価図書案」を見ると、方法書に相当する「継続環境調査検討書」(アセス法でアセスが義務づけられている規模の事業ではないため、このような独自の名称が使われている)段階の計画から、環境への影響を緩和するように、かなり慎重な検討が行われていると思う。
取り付け道路は、1箇所だけ、それも延長1.5kmのみに減らされている。
その他の場所のヘリパッドはすべて、既存の道路の直近に計画されている。また、ヘリパッド移設予定地すべては、沖縄県が指定した保護上もっとも重要なエリアの外である。
一方で、北部訓練場に現在配置されているヘリパッドの多くは、保護上もっとも重要なエリア(海岸から遠い中央部)にある。これらの場所は返還されるのだが、返還後のほうがむしろ心配である。これまで北部訓練場として米軍が占有していたから、森林も渓流も残ってきたという事情がある。
沖縄は、世界に誇れる自然があるのだが、その将来は明るくない。次の世代にこのすばらしい自然遺産を受け渡すために、できることはしたいと思う。

「北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業(仮称)に係わる環境影響評価図書案」に関する意見

 那覇防衛施設局の「北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業(仮称)に係わる環境影響評価図書案」に関して下記の通り意見書を提出します。

 環境影響評価図書案に関して、3月24日に開催された日本生態学会自然保護専門委員会の場で議論を行いました。委員会では、本事業地は将来国立公園として保護・活用されるべき、世界的に貴重な自然が残る場所であるという基本認識にもとづいて、ヘリコプター着陸帯移設によってその自然環境が損なわれることがないよう、図書案を慎重に検討し、意見書を提出することが了承されました。しかし、委員会としての意見書の成案を得るにはなお検討期間を必要とするため、日本生態学会九州地区会長である私が、本日の消印を持ってまず意見を述べさせていただきます。委員会としての意見書は後日提出いたします。
 環境影響評価図書案においては、継続環境調査検討書に対して提出された意見に対して調査を実施するとともに、環境への影響に配慮した計画に修正し、修正された事業計画の下での環境影響評価に関して、事業者の見解が述べられています。しかしながら、工事によって影響を受ける希少動植物の個体数に関して定量的な情報がないため、愛知万博事業予定地で実施されたような生態系への量的な影響評価を行うことができません。また、工事によって失われる希少植物に関して移植による保全対策が提案されていますが、移植適地がどこにどの程度の面積で確保できるかについての資料がなく、移植の成功の可能性がどれくらいかについて、判断できません。
 図書案だけでは判断しかねる部分が多々あり、日本生態学会自然保護専門委員会では生態学諸分野の専門家による現地視察の実施を要望します。