新キャンパス林床移植地での植物種分布の変化

yahara2006-02-04

500地点の調査データの入力が終わり、入力ミスなどのチェックを終えて、2002年と2005年の植物種分布を比較する作業が終わった。大規模なかく乱後の種の分布の変化を500地点規模で追跡したデータは、かなり貴重だと思う。
詳細な解析はこれからだが、傾向ははっきりした。
図は、横軸に出現地点数に関する種の順位、縦軸に出現地点数をとったグラフである。青マークは2002年、ピンクが2005年のデータである。この図から、順位の高い種において出現地点数が増加している傾向がはっきりと見える。つまり、移植時のブロック間の異質性が次第に減少し、広く分布する種がますます多くの地点に分布をひろげていることがわかる。このような傾向が続けば、種の多様性は次第に減少してものと予想される。
しかし、2002年から2005年にかけて、正味で減ったのは4種だけだった。この数字は、予想したよりも少なかった。これは、新規加入種が多かったためである。3年間の種数の収支は、241種−58種+54種=237種。つまり58種が消失する一方で、54もの種が新たに加入したのである。これらの加入は、土壌中で休眠していた種子や株から由来したと考えられるものがほとんどである。林床の土壌を保全することがいかに重要かがわかる。
「林床移植」という森林移植法が、植物種多様性の保全にとってきわめて有効であることが、このデータから言えると思う。
500ブロックの空間的な位置関係の情報があり、毎年の調査データがあるので、隣接ブロックへの分散率など、いろいろなパラメータが推定できると思う。しかし今は解析している時間がない。
この図ができたことで、2月7日の環境省でのヒアリングで使う予定の20枚のパワーポイントスライドがすべて完成した。
とりあえずは、この仕事はここまでで中断して、科学技術振興調整費申請、ひらめき☆ときめきサイエンス、P&P生物多様性シンポジウムなどの準備にあたらねばならない。