屋久島まるごと保全協会設立

昨夜、7時から9時すぎまで、「屋久島まるごと保全協会」設立総会が開催された。
「まるごと」の意味や、会の目的については、会則の第一章「総則」に次のように記されている。

  • 第一条:本会は、屋久島まるごと保全協会(Yakushima Overall Conserving Association)と称し、略称を「よか」(YOKA)と称する。
  • 第二条:本会は、本部を屋久島に置く。
  • 第三条:本会は、人をふくむ屋久島の生態系全体の保全に寄与することを目的とする。


設立総会では、まず準備会会長あいさつのあと、Tさんからこれまでの経過が説明された。

  • 2004年6月26日:プロジェクトY現地説明会が宮之浦公民館で開催された。
  • 2004年8月25-29日:日本生態学会釧路大会自由集会「屋久島の自然植生保全ニホンジカ管理」にTがコメンターとして参加した。
  • 2004年11月27-28日:シンポジウム「シカと森の『今』をたしかめる」(森林再生支援センター主催、奈良教育大学で開催)にTら5名が「プロジェクトY現地加勢人会」として参加し、「『サル2万、シカ2万、ヒト2万』屋久島報告」と題して報告をした。
  • 2005年7月17日:朝日新聞で「屋久島荒らすヤクシカ」「植物固有種が急減」「調査の九大教授 個体数管理を」という見出しで、プロジェクトYが紹介された。
  • 2005年10月8日:屋久島環境文化村センターで、プロジェクトYの現地報告会をかねて、公開講座が開催された。
  • 2005年10月12日:「プロジェクトY現地加勢人会」を中心に、有志が集まり、YOCA構想が生まれた
  • それ以後6回会合を重ねて今日に至った。

次に、プロジェクトYを進めている大学教官3名(矢原・松田・立澤)が自己紹介をして、研究の目的、進捗状況、島民参加のモニタリングの意義について説明した。そのあと、自然環境研究センターの2名、新しく参加した島民5名が自己紹介をした。

次に、準備会副会長があいさつし、「猟友会メンバーとして、シカの有害駆除に携わっているが、農家の被害の声を聞き、ほっておけないと考えている。駆除したシカの肉を仲間内で食べるだけでなく、有効に使えないかと考えている。」と述べた。

次に、これまでの活動は準備会としての活動であり、本会合が設立総会にあたることが確認され、会則について審議し、「本会則は2007年12月9日の設立総会において決定し、同日をもって発効する」という附則をつけた会則を採択した。
続いて、会の今後の活動のあり方について、次のような意見が交わされた。

W:会の趣旨には賛同できるが、活動計画についての説明がないと会員になるかどうかの意思決定ができない。
H:シカが増えて生態系に影響を与えている問題がきっかけ。その問題を考えると、より大きな問題が視野にはいってきた。
T:今後の活動で、プロジェクトYの支援をしたいが、どのようなことができるか、説明してほしい。
矢原:まずシカの目撃数調査があげられる。プロジェクトは来年まで。その後もモニタリングを継続するには島民の協力が必要。シカは林道沿いで増えている。林道沿いでの目撃数を島民の協力の下で継続できないか。また、どこにどんな絶滅危惧種が残っているかが詳細にわかってきたので、特定の植物についてのモニタリングについても、島民の方々の協力を得たい。
立澤:2年間のシカ目撃数調査データはまだまだ粗いので、もっと詳しく調べたい。次のような活動が考えられる。(1)目撃情報を集める、(2)路線担当者を決めて、定期センサスをする。(3)駆除個体の標本からわかる情報(歯から年齢がわかる。何を食べているか。子供をもっているかどうか)の収集をする。
T:農林業被害のきめ細かな調査も行いたい。
松田:屋久島に何頭いるかを知るには、地区別に、雄雌別の捕獲数と増減傾向のデータがほしい。
W:報告書は作れるのか?
矢原:わかった範囲のことは報告書にまとめる。「よか」の会は、楽しくやって、長続きしてほしい。
H:「よか」の会どんなことをやりたいか、これまでに議論してきた例を紹介してほしい。
T:次のような例を相談してきた。

  • シカ・サル・イタチ・タヌキを含めた現状把握。ライトセンサス・痕跡調査。
  • 「特定保護鳥獣管理計画」策定に向けた取り組み。
  • シカの活用。有効利用できるものについては有効利用する。
  • ヤクシマリンドウの現状調査。高山帯の希少植物。
  • 人工林を天然林に戻すとりくみ。垂直分布を回復させる。
  • 餌付け対策、町で条例を作るようにはたらきかけ。
  • のり面吹きつけへの対策。
  • 農家の獣害の現状調査と対策への協力(柵のまわりの草刈など)

以上のような議論のあと、評議員・会長・副会長・事務局長を選出し、設立総会を終えた。
総会のあとは、もちろん飲み会。シカ肉料理を食べながら、「よか」会の今後の活動について語り合い、大いに盛り上がった。
人数が減って、会場(Mさんの別邸:通称寺子屋)に泊まるメンバーが残ったのは、12時近かったと思う。「特定保護鳥獣管理計画」策定の是非について議論しようということになった。松田さんがホワイトボードを使って、鳥獣保護行政のしくみや「特定保護鳥獣管理計画」について説明し、この説明を受けて「特定計画」策定の利点と問題点について議論をした。「特定計画」をつくり、島外のハンターが猟期に自由に島に入った場合、どこで猟をしているかわからないのは不安だという意見や、遭難事故がきっとおきるのではないかという意見があった。一方で、「特定計画」策定を通じて、関連行政機関(環境省・森林管理所と保全センター・鹿児島県)が協議をしていく場を作ることは、屋久島の今後にとってとても重要だという点では、合意が成立した。結論として、「特定計画」の中で、可猟期の期間設定などにより、島外のハンターの島への関わり方を制限するのが現実的だという相談になった。
そのあと、自然再生事業や世界遺産管理計画についても話題にのぼり、議論はかなり深まった。寝袋にはいってたたみの上にころがったのは、2時すぎだったと思う。ボージョレヌーボーと本醸造大吟醸に酔いしれて、熟睡した。