イシガメの回帰能力

yahara2005-10-16

今日は秋晴れ。空はどこを見ても同じように青く、緑の木々とのコントラストが美しかった。気温は、暑からず、寒からず。こんな日に、少人数ゼミの実習で、新キャンパスの保全緑地を歩けたのは、幸運だった。
午前中は、5箇所の池で水生動物の調査。網ですくった動物の個体数を数える単純な調査だが、第一工区の造成工事が済んだ3年前から毎年続けている。昨年のゼミでは、廣田君が2年間の結果を比較して、「新キャンパス内の池における生物相の変化とその原因」というレポートを書いている。
今年は3年目であり、データにも少し厚みが出てきた。
午後は、アナグマの巣穴を見たあと、最近よくイシガメが落ちているという仮設集水マスを見て回った。林床移植地に隣接した仮設集水マスで、マスに落ちた銭亀(イシガメの子供)を1匹発見し、救出した。
これまでの新キャンパスでの調査によって、イシガメは、水辺だけでなく、尾根をこえ、森の林床を移動することがわかっている。移動距離はしばしば2kmを越える。保護のために、遠くに移動させても、もとの池に戻る。いったいどうやって方角や位置を認識しているのか、不思議だ。
先日の下見の際に、卒業研究生のYさんから、マスから救出したカメを地面に置くと、みんな保全緑地の森をめがけて歩き出したという話を聞いた。
そこで、今日、救出した小亀について、同じ行動をとるかどうか、実験してみた。
すると、わき目もふらず、一直線に森に向かって歩き出した。捕まえて持ち上げ、逆向きにして地面においても、180度ターンをして、森にむかって歩き出すのだ。
最初の実験は、保全ゾーンの森の西側でやったので、次に森の東側まで移動して、実験を繰り返してみた。すると、今度は最初の実験とは正反対の方向に向かって、つまり正しく森のある方向に向かって歩き出した。
一同あっけにとられ、それから後は、小亀くんにはとんでもないご迷惑をおかけした。あちこちに持ち歩いては、バケツから地面に出し、何度も歩かせたのである。ほとんどいじめに近い。
どうやら、室内では方角がよくわからないようだ。太陽の方向を参照しているのだろう。しかし、それだけで「お家」の方角がわかるはずはない。まったくもって、不思議である。
研究室に戻って調べてみると、テレメをつけたウミガメを遠隔地に放流し、もとの場所に回帰する過程を追跡したという論文があった。数百kmの距離を戻ってしまうらしい。とんでもない能力である。
体内磁石を持っているのではないだろうか。