家田川の藻刈り
昨日は、宮崎県北川町家田川の「藻刈り」を手伝った。家田川は、湧水地から水田をぬって、北川本流に流れこむ、小川である。数千株のヒメコウホネが群生しており、さらに最近発表された新種であるハタベカンガレイや、キタガワヒルムシロと仮称されているオヒルムシロの一型など、希少な植物の見事な群落がある。
この水草群落は、地元の方々による「藻刈り」によって維持されている。水量は決して多くないので、藻刈り(水草刈り)をしなければ、マコモなどの高茎草本が茂り、水面が失われ、沈水植物や浮葉植物は激減するはずだ。
家田川の周囲の水田跡地には、湿原が再生し、オニナルコスゲやウマスゲ、サデクサなどの希少種が群生している。隣の集落の川坂にも、水田跡地に湿原的環境が再生している。この家田・川坂「湿原」の保全をめぐっては、いろいろないきさつがあったが、現在では、保全の方向で話が進んでいる。自然再生事業の計画についても、相談が始まっている。私はこの、「家田・川坂川自然再生計画検討委員会」の委員をつとめている。
数年前から、地元の方々による「藻刈り」を、「湿原」の保全事業の一環としてとらえ、宮崎県延岡工事事務所のスタッフと自然再生計画検討委員会の委員が、「藻刈り」に協力している。
今年は、調査予定日とうまく日程が合ったので、学生2名・ポスドク1名と一緒に、「藻刈り」に参加した。
希少種・絶滅危惧種の水草を、ざくざくと鎌で刈って、小川から運び出した。一昔前なら、「希少な植物だから、そのままの状態で保全を」と考えていたところだ。しかし現実には、小川の水草群落は、残すだけでは守れない自然の一例である。定期的な草刈りこそ、沈水植物や浮葉植物の群落を守る手段なのだ。
とはいえ、希少種を切って捨てるのは、もったいない気がする。ヒメコウホネやハタベカンガレイなどの標本をほしい人は少なくないだろう。来年は、標本採集をしたい人を全国から募って、藻刈りに協力してもらってはどうだろうかと考えてみた。
希少な水草の標本がほしい人、数千株のヒメコウホネが群生する小川を見てみたい人はぜひ、来年の藻刈りにご協力いただきたい。