新キャンパスシンポジウムを終えて

今日は、シンポジウム「九大新キャンパスにおける森と生き物の未来−大学・学生・市民の協働による里山保全を目指して−」に出た。九大新キャンパスで活動している3つのボランティアチーム(市民の手による生物調査・福岡グリーンヘルパーの会・NPO法人環境創造舎)が合同で開催しているシンポジウムで、今年で3年目になる。私の役目は、基調講演と、パネルディスカッションの司会だった。これらの役目について、私が反省するところは多々あるが、シンポジウム自体は、とても良かった。
今回のシンポが良かった点。何よりも、地元の小学生の発表がとても良かった。環境創造舎の学生と野球をしたり、生物探検をしたりした経験を、ひとりひとり話してくれた。子供たちは希望である。彼らが未来を作る。今日の経験は、きっと彼らの将来に役立つし、もしかすると、この経験が彼らの人生を左右することだって、あるかもしれない。そういう取り組みを、これからも続けていきたい。
聴衆に小学生も混じる中で、50分の基調講演をするのは、つらかった。次回は、小学生にもわかる話の組み立てを準備しよう。今日は、大人向けに作ってしまった。ごめん。
良かった点、その2。始めての参加者が9割をこえたこと。パネルディスカッションのときに、手をあげてもらって、確認した。今回は、はじめて箱崎キャンパスを離れ、西区役所のそばの市民センターホールで開催した。西区総務部企画課のスタッフの方々にご支援をいただいた。その効果が大きかったのだと思う。地元の自治会の方々もたくさん見えていた。ゆっくり話をする時間がなかった点が心残りだが、必ず今後につながると思う。
良かった点、その3、というより、昨年から確実に進んだ点。浜地酒造さんのご協力を得て、学生が酒の仕込みを手伝い、その経験を報告できたこと。環境創造舎舎長の紙芝居も良かった。地域とのつながりが、形になり、しかもそこに学生が参加しているのは、とてもすばらしいことだ。
福岡グリーンヘルパーの会の報告では、地元の休耕田を借りてハウスを作り、新キャンパスで集めた種からたくさんの苗木を育てているという報告があり、心強かった。みんなで植える日が楽しみだ。たとえば、成人式の日に、成人する九大生に記念植樹してもらうのは、どうだろう。新キャンパスの自然への親しみがぐんと深まるし、たとえば30年たって、立派に育った自分の木を見ることができれば、最高じゃないか。
市民の手による生物調査の発表では、カメ罠の回収ミスから、罠にかかったカメを死なせてしまったことがつつみ隠さず報告された。罠の中に残った甲羅の破片をつなぎあわえて復元し、甲羅の構造の紹介に生かし、失った命に新しい命を吹き込んだ取り組みは、聞くものの胸を打った。
パネルディスカッションでは、3団体に加えて、新キャンパス計画推進室の坂井先生と、西区役所総務部企画課長から、参加者の質問に答える形で、大学・行政の真摯な取り組みが紹介された。
福岡森づくりネットワークのご協力で実現したロビー展示、「里の生き物写真展」も、とても良かった。里山の生物の豊かさが、すばらしい写真で紹介され、参加者の共有財産になった。
まだまだ、解決しなければ問題はたくさんあるし、乗り越えなければならない障壁もあるが、さまざまな立場の者どうしの協働が、確実に進んでいる。
教師としてみると、準備・運営に携わった環境創造舎の学生たち(矢原ゼミの1年生もかなりいる)の感想は、教師冥利につきるものだった。たとえば、参加者として席にすわっていたときとは違って、運営する側の視点をもつことができて良かった、という感想があった。他のボランティア団体の「段取り力」が勉強になった、という者もいた。ひとりひとり、新しい経験を通じて、新しい発見があり、今日1日を通じて、確実に何かを得ていた。授業でどんなに教えても教えることができない、生きた学習の場であったと思う。
金沢・京都から参加したくださった方と、はぐれてしまったのが残念だった。企画の準備に精一杯で、あとの交流会まで用意する余裕がなかった。この点は、宿題としよう。
ともあれ、充実した1日が終わった。明日から、次のステップに踏み出そう。