生物多様性シンポを終えて

昨日の「生物多様性」シンポでは、1年生も含め、若い参加者が多かった。人数は数えなかったが、立ち見が出て、椅子を増やしたので、100名はこえていたはず。懇親会にも、「学生は参加費無料」のアナウンスが効を奏してか、学生の参加が多かった。私は、参加者中の学生比率を、企画の成功度をはかる重要な指標にしているので、この点ではとてもよかった、年寄りばかりじゃ、未来がない。
内容については、いろいろな感想・評価があるだろう。参加された方々から、コメントをいただければ幸いである。
個人的には、日浦さんが紹介された、セイヨウオオマルハナバチを導入した場合に野生植物の繁殖成功が劇的に減少するという実験結果が印象深かった。実験計画も結果もクリアだし、密封式フレームハウスに樹木まで移植して、大規模な実験を実行したパワーにも、脱帽した。次は、ミミズの除去実験が成功することを祈ろう。
島谷さんの、「河川工学は解決の学、生態学は解明の学、社会科学は解釈の学」という説明には、なるほどと思った。解決の学と解明の学は、ともに必要である。相互理解が進めば、協力関係もうまくいくだろう。問題は、社会科学。「解釈の学」では困ると思う。生物多様性との関連では、「合意形成と意思決定の学」が必要だ。その意味で、社会科学も、「解決の学」であるべきではないか。
中静さんからは、九大のプログラムに対して「保全に力点がある」という評価をいただいた。これは本望である。「生物多様性」というキーワードをかかげたプロジェクトで、九大ほど真剣に「保全」に取り組んでいるところはないと自負している。「生物多様性」に関心を持つ市民の多くは、その「インベントリー」や「生態系機能」や「持続的利用」よりも、「保全」に関心があると思う。この関心に対して、真摯に答えなければ、生物多様性研究への国民的支持は得られないと思うのだ。
保全」は「事業」と直結しているので、科学者にとってはしんどい仕事である。「解明の学」としても評価される成果を出しながら、「保全」の問題を「解決」していく二刀流が要求される。この二刀流を真剣に追求することで、九大の特色を出していきたい。