里山保全と酒づくり

今日は、九州大吟醸プロジェクトの拡大会議に出た。九大新キャンパスの里山保全を目的として設立された学内NPO法人環境創造舎の活動に、新キャンパスに隣接する元岡で地酒を作られている浜地酒造さん(明治以来の老舗)が関心を持たれたことから始まったプロジェクトだ。両者の交流が進んでいるところに、芸術工学研究院のS先生が九大グッズデザインの一つとして、「九州大吟醸」のネームとデザインを作られたので、流れが大きくなった。これから、酒造りの仕込みがはじまる。仕込みと酒しぼりに学生も参加して、3月には、「九州大吟醸」が誕生する予定だ。九大新キャンパスの情報発信拠点「ビッグオレンジ」で、地域の方々も招いてお披露目をしようという話になっている。この「九州大吟醸」の売り上げの一部は、森を守る活動のための基金にあてられる予定だ。浜地さんの言葉を借りれば、「酒が売れるほど、森が増えていく」プロジェクトにしたい。

今日の拡大会議では、農学研究院で、酵母の遺伝子発現の研究をされているK先生(もちろん日本酒が好き)らも新たに参加され、九大オリジナルの酒をどうつくるかという議論をした。全国的には、日本酒は「端麗辛口」が主流になっているが、博多の料理には必ずしもあわない。博多の料理に合う酒をつくろうという方針が、大方の合意になった。ユーザーサイエンス機構のプロジェクトとして、博多の料理に合う酒とはどんな味かを研究してみてはどうかという案も出た。酒については、酒造メーカーや発酵メーカーの研究部門で、さまざまな研究が行われている。しかし、必ずしも「ユーザー」が求める酒がつくられてはいないと思う。蔵元のウェブサイトをみると、品評会で入賞するために苦労を重ねているところが少なくない。しかし、品評会で入賞した酒が、料理に合うとは限らない。友人に、利酒師の名詞を持ち歩いている植物学者がいるが、酒は利酒師のためだけにあるわけではない。利酒師の「味覚」は、食事と一緒に酒を味わいたいという人の「味覚」とはずれているかもしれないのだ。料理を食べる前と、食べたあとでの評価の違いを、学生・教職員(500人から1000人くらい)を対象に、調査してはどうかというアイデアも出た。

酒の話になると、一家言を持つ教官は少なくない。さまざまな分野の専門家がいるから、「九州大吟醸」プロジェクトがきっかけになって、酒に関する学内の研究プロジェクトが進むのも面白い。そんな研究プロジェクトと、森や生物を守るプロジェクトがうまくかみあえば、みんながわくわくできるだろう。

今日は、そのほかには、細々とした事務作業に追われた。学位論文の改稿がなかなか進まない。明日は東京なので、かえってゆっくりと時間がとれる。西新に着いた。今日はこれまでにして、早く寝よう。といっても、もう11時半だけど。