九州グリーンヘルパーサミット

昨日は、福岡市で開催された「九州グリーンヘルパーサミット〜10年の歩みとこれから目指すもの〜」に出席し、「グリーンヘルパー10年の歩みと地域の森づくりの役割」と題して約30分の講演をしたあと、パネルディスカッションのコーディネータをつとめた。
第一回グリーンヘルパー養成講座が熊本市で開催されたのは1998年だから、12年前のことだ。その後1999年に福岡で、2000年に佐賀・大分で、2001年に宮崎・鹿児島でグリーンヘルパー養成講座が開催され、グリーンヘルパーの会が各県で活動を開始した。2001年には、これらの会が一堂に会して、「第1回九州グリーンヘルパーの会 合同研修」を佐賀県で開催した。この合同研修が今年で10年目を迎える。
「グリーンヘルパー養成講座」は、緑のまちづくり交流協会http://www.zaidan-kensyu.jp/midori/greenhelper/greenhelper.php)を1998年に設立された小池美千代代表の強い思いで実現し、九州電力の協力を得て12年間発展を続けてきた。私は1997年に、この企画について相談を受け、小池美千代さんの熱い思いにうたれて、講座のカリキュラムづくりに協力するとともに、12年間、講師をつとめてきた。
講座のカリキュラムには、園芸実習と野外実習を加えた。座学だけでは、グリーンヘルパーに必要な知識・技術を身につけることはむつかしい。植物を育て、野外の植物に接する経験がぜひ必要だ。また、各県の植物相の特色についての講義を設け、それぞれの県の植物研究の第一人者に講義をお願いすることにした。自生種で森づくりをすることの大切さなど、生態系保全の基本的な考え方は私が2コマの講義で話すことにした。今回パネルディスカッションにご参加いただいた薛先生や田中先生らの協力も得て、6日間分の充実したカリキュラムが編成された。12年間で計22回の講座を開講した(http://www.zaidan-kensyu.jp/midori/greenhelper/result.php)。2002年には長崎で講座を開講し、7県目のグリーンヘルパーの会ができた。また、大分で2巡目の講座を開講し、2006年には3巡目の講座がスタートした。これらの講座を受講した1217名のうち約400名が各県のグリーンヘルパーの会(7県9団体:福岡県・鹿児島県には、福岡GH,鹿児島GHのほかに、北九州GH, さつまGHがある)で活動している。
グリーンヘルパー養成講座の受講者に修了証を出すだけでなく、「グリーンヘルパーの会」を作って活動を続けていただくというアイデアは、私が提案したものではない。誰かにたのまれて苗木を植えるのではなく、自分たちで考えて活動できる人材を育てることが大切だ、という考えを述べたとは思うが、具体的に会を組織して活動を実践されたのは、緑のまちづくり交流協会のスタッフの方々である。理事の井田博之さんや、事務局をつとめられたSさん、Mさん、Hさんらのおかげで、グリーンヘルパーの会が各県で活動を開始し、「九州グリーンヘルパーの会 合同研修」を通じて交流を深めながら、確かな歩みを続け、各県ごとに特色ある実績をあげることができた。
パネルディスカッションを通じて、後継者養成、活動資金の確保などの共通の課題が浮かび上がった。しかし一方で、楽しいから続けられるという経験も共有できたと思う。野外での活動に参加できなくなった会員でも、旬の料理を作って会食・宴会の場に参加することはできる。楽しくて、健康に良くて、やりがいがある。そういう活動を、無理をせずに続けていただきたいと、心から願うものである。
今年からは、九州電力からの財政支援がなくなる。この事情もあって、「九州グリーンヘルパーサミット」が開かれたのだと思う。後継者の養成という点で、「グリーンヘルパー養成講座」の開催を続けていく必要があるが、これからは自前で開催しなければならない。このような講座を開催することへの助成制度をもっと充実させたいものだ。また、生物多様性への企業の関心も高まっているので、努力を続ければ、きっと支援者が見つかるだろう。

知床世界自然遺産登録5周年記念シンポジウム

今日は、横浜ランドマークホールで開催された「知床世界自然遺産登録5周年記念シンポジウム」(http://www.env.go.jp/nature/isan/sympo1006/)にパネラーとして参加した。シンポジウムの様子は、7月11日(日)18:00-19:00にNHK教育で放映される予定。

重症心身障害児施設の維持を求める署名

両親から、重症心身障害児施設の維持を求める署名が届いた。政府は障害者総合福祉法制定に向けて、「障がい者制度改革推進会議」を設けて議論を重ねており、そのなかで、「重度の障害者が施設の中で暮らすことは人権侵害である」などの意見が出て、重症心身障害児施設などを廃止し、在宅移行を図る方向性が検討されているらしい。
またしても、十分な調整や準備がないまま、理想論を行政に持ち込んで、現場を混乱に陥れるつもりか。
障がい者制度改革推進本部のウェブサイト(http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/kaikaku.html)をみると、過去14回の会議の記録が公表されていた。6月7日に開催された第14回会合で「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」(http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/s_kaigi/k_14/pdf/s1.pdf)がまとめられている。これにざっと目を通してみたが、やはり、十分な調整や準備がないまま、理想論を制度化しようとしているように思える。「障害の有無にかかわらず、それぞれの個性の差異と多様性が尊重され、それぞれの人格を認め合う共生社会の構築」という理念には賛成だが、大きな差異があることも事実であり、理想論だけで解決できるほど軽い問題ではない。「特別支援学校は、本人が生活する地域にないことも多く、そのことが幼少の頃から地域社会における同年齢の子どもと育つ生活の機会を失わせたり、通常にはない負担や生活を本人・保護者に求めたり、地域の子どもたちから分離される要因ともなっている」という指摘も現状の問題点をついたものだが、一方でこれまでに取組まれてきた特別支援学校教育の成果を生かさずして、事態の改善はのぞめない。ましてや、本人に判断力がともなっていない重度障害児の場合、施設を廃止すれば、家族は途方にくれるしかない。差別や虐待の問題があることは事実で、その改善は急務だが、在宅移行を原則とする方向への政策転換は、現場を大混乱に陥れること必至である。
管政権の下で、現実を見据えた軌道修正が行われることを切望する。