重症心身障害児施設の維持を求める署名

両親から、重症心身障害児施設の維持を求める署名が届いた。政府は障害者総合福祉法制定に向けて、「障がい者制度改革推進会議」を設けて議論を重ねており、そのなかで、「重度の障害者が施設の中で暮らすことは人権侵害である」などの意見が出て、重症心身障害児施設などを廃止し、在宅移行を図る方向性が検討されているらしい。
またしても、十分な調整や準備がないまま、理想論を行政に持ち込んで、現場を混乱に陥れるつもりか。
障がい者制度改革推進本部のウェブサイト(http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/kaikaku.html)をみると、過去14回の会議の記録が公表されていた。6月7日に開催された第14回会合で「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」(http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/s_kaigi/k_14/pdf/s1.pdf)がまとめられている。これにざっと目を通してみたが、やはり、十分な調整や準備がないまま、理想論を制度化しようとしているように思える。「障害の有無にかかわらず、それぞれの個性の差異と多様性が尊重され、それぞれの人格を認め合う共生社会の構築」という理念には賛成だが、大きな差異があることも事実であり、理想論だけで解決できるほど軽い問題ではない。「特別支援学校は、本人が生活する地域にないことも多く、そのことが幼少の頃から地域社会における同年齢の子どもと育つ生活の機会を失わせたり、通常にはない負担や生活を本人・保護者に求めたり、地域の子どもたちから分離される要因ともなっている」という指摘も現状の問題点をついたものだが、一方でこれまでに取組まれてきた特別支援学校教育の成果を生かさずして、事態の改善はのぞめない。ましてや、本人に判断力がともなっていない重度障害児の場合、施設を廃止すれば、家族は途方にくれるしかない。差別や虐待の問題があることは事実で、その改善は急務だが、在宅移行を原則とする方向への政策転換は、現場を大混乱に陥れること必至である。
管政権の下で、現実を見据えた軌道修正が行われることを切望する。