幕が上がる

筑肥線車中で「幕が上がる」を検索したら、平田オリザさんの昨日のブログがヒットした。「本当に美しい出来になりました」とこの人が言うのなら、間違いない。また、「『桐島、部活やめるってよ』のシナリオを書いた喜安浩平さんの台本が、本当に素晴らしく、原作を生かしながら、それ以上のものを創ってくださいました」とのこと。『桐島、部活やめるってよ』の脚本は凄かった。これは期待できる。本広監督は以前に『少林少女』という駄作を作っているので心配だったが、『少林少女』はそもそも脚本がだめだった。監督だけの責任ではないだろう。『UDON』は良かったし。
「『幕が上がる』は、朝、情報公開があってから、amazonでは瞬殺で売り切れになった」そうだ。私は事前に予想して入手しておいたので、昨日から今朝にかけて読んだ。すばらしい。さすがは平田オリザさん、単なる青春小説にとどまっていない。劇中劇の『銀河鉄道の夜』でエンディングを書き変えているのだが、これがすばらしい。
「もともと、この『幕が上がる』は、2011年1月にフランスの子供たち向けに『銀河鉄道の夜』を舞台化するため、パリに長期滞在していたときに、稽古と並行して書いた小説です」(『幕が上がる』公式サイトより)。
なるほどね。『銀河鉄道の夜』を自分なりの解釈で舞台化したい、というのがそもそもの動機だったんだ。なっとく。宮沢賢治ファンとして、期待しかない。
それにしても、ももクロはビッグチャンスをつかんだね。『幕が上がる』の登場人物は、成長途上のリーダー、お姫様キャラの親友、ひょうきんなムードメーカー、実力派の転校生、そして頑張り屋の後輩。ももクロをモデルにしたとしか思えない設定だが、まったく知らずに書かれたようだ。リーダーと親友の「シングルベッド」シーンとか、転校生にからんで吉祥寺が登場するところなど、ももクロを知らずに書いたにしては、できすぎた一致だが、書かれたのが2011年1月ということなので、偶然の一致なのだろう。それだけももクロの5人のキャラクターが、典型性・普遍性を持っているということなのだろう。
映画のあとは、舞台化をして、30公演くらいやるそうだ。舞台の脚本は、平田オリザさんご自身が手掛けられるという。原作ですでに歌やダンスも書きこまれているので、平田さんとしても、ももクロという素材には魅力を感じられているようだ。
ももクロは7月に出したシングル曲『Moon Pride』で、「Shiny Make-up 戦うよ星空をまとって 新しい伝説が今ここからはじまる」と歌っているが、『銀河鉄道の夜』という名作をまとって、本当に新しい伝説を作りそうだ。
ももクロという青春ロードムービーの第二幕が、たしかに上がる。