カールじいさんの空飛ぶ家

ギアナ高地を舞台にしたピクサーの冒険アニメ。しかも「空飛ぶ家」というタイトルがついていては、ギアナ高地にあこがれている「空飛ぶ教授」としては、見過ごすわけにはいかない。
映画の冒頭で、幼いころのエリーとの運命的な出会いから、結婚、不幸をのりこえての仲むつまじい夫婦生活、そして最愛のエリーを見送るまでのカールじいさんの生涯が、わずか数分で描かれる。この数分だけで涙ぐむという前評判を聞いていたが、うわさにたがわぬすばらしい導入部だ。この数分だけで、あぁ、この映画を観に来て良かったと、心の底から思った。
最愛のエリーを失い、生き続ける意味を失い、頑固で偏屈なじいさんとして孤独な日々を送るカール。このじいさんを主人公にして、いったいどんな冒険物語が語れるのだろう。上記の導入部のあとで、養老院への勧誘を頑なにこばみつづけるカールじいさんが登場したときには、その後の展開がまったく想像できなかった。そこから始まる物語については、ぜひ映画館でご覧あれ。手に汗握る展開が続き、エンターテイメントとしてまちがいなく傑作だ。高所恐怖症の私としては、足元がむずむずする場面が多かったが、それでも思わず身を乗り出したくなるほど、エキサイティングなストーリー展開だった。
しかも、過去にとらわれ続けがカールじいさんが、「残された人生の目標」をかなえた瞬間に、その目標を投げすてて新らしい一歩を踏み出すという展開には、なかなかに考えさせられるものがあった。単なるエンターテイメントを超えた、すばらしい映画に仕上がっている。大満足。