ヤッターマン

日曜日には、「ヤッターマン」と「おくりびと」を観た。
この2本を続けて見る映画ファンは、まずいないのではないだろうか。実際、「ヤッターマン」の観客といえば、日曜日ということもあり、親子づればかり。一方の「おくりびと」は、シニア世代ばかりだった。
テレビアニメ「ヤッターマン」が放映されたのは、私が大学院のころだ。下宿にテレビはなかったので、実家に帰省したときなどに、たまに見ただけだが、完成度の高いばかばかしさとドロンボー一味の強烈なキャラクターとが印象に残っている。
ストーリーは毎回、水戸黄門なみにワンパターンだった。まず、ドロンボー一味がドクロストーン探しの資金稼ぎのために悪徳商売を始め、それをかぎつけたヤッターマン一号・二号がヤッターワンという巨大犬型ロボットとともに出動するが、ドロンボー一味のロボットに一度は必ず負けてピンチに陥る。そこで登場するのが「MECA NO MOTO」という骨型アイテム。「MECA NO MOTO」を食べたヤッターワンは復活し、「今週のびっくりどっきりメカ」という小型ロボットを大量に繰り出し、ドロンボー一味を撃退する。ぼろぼろになったドロンボー一味は、3人乗りの自転車を必死でこいで逃げるが、ドロンボー一味がつかえる「ドクロベー」さまの「お仕置きだべ〜」で、さらにぼろぼろになって、一話終了。
このワンパターンの構成でもさほど飽きなかったのは、「今週のびっくりどっきりメカ」が毎回良く考えられており、「今週はどんなメカが登場するだろう」と大いに期待できたからだ。もちろん、ドロンボー一味のロボットも毎回変わるし、ヤッターワンのやられ方も、「ドクロベー」さまのお仕置きも、毎回趣向を変え、工夫がされていた。しかし、なんといっても「今週のびっくりどっきりメカ」が面白かった。
そのため、実写版の映画にも「今週のびっくりどっきりメカ」が登場するという話を聞いて、見てみようという気になった。もっとも、学期末・年度末業務がひとまず一段落し、頭がかなり酸欠状態のこのタイミングでなければ、この「おばか映画」を観るために映画館に足を運ぶことはなかっただろう。
さて、映画版「今週のびっくりどっきりメカ」。まず登場したのは、アリ。
「アリ、アリ、アリ、・・・」とつぶやきながら大量のアリロボットが繰り出すシーンに、そうそう、これだよ、と嬉しくなった。2回目は、トビウオ。「トビ、トビ、トビ、・・・」とつぶやきながら、トビウオロボットが行進。なつかしい。これに対して、ドロンボー一味のメカ担当ボヤッキーも、小型のハマチロボットを大量に繰り出すが、トビウオの空中攻撃にやられるばかり。ところが、「ハマチ諸君、よくがんばった。もう出世して良いよ」とボヤッキーが指令を出すと、ハマチロボットが合体してブリロボットに変身。
ここで、「説明しよう。ハマチは・・・」と出世魚を説明するナレーションが入るところも、原作アニメのままである。やがてトビウオロボは敗退し、ヤッターマンは大ピンチ。しかし最後は、「やっておしまい」という攻撃指令に、ブリロボットはこともあろうにドロンボー一味が乗ったロボットを攻撃し、一味は自爆。ボヤッキーがつぶやく「しまった、出世しすぎた」というオチも、原作の「ノリ」そのままだ。
まぁ、そんな映画なので、お金を払ってみることを決してお勧めしないが、アニメ「ヤッターマン」を見て育った世代(主要には私よりひとまわり下、つまりアラフォー世代)には、結構受けるのではないかと思う。実際、子供連れの親は、ほとんどその世代だった。
子供の中には、かなり早い段階から「早く帰りたいよう」と泣き叫ぶ子がいたが、どんな映画でもぐずる子はいる。全体としては、黙って見ている子供が大半だった。ただし、この映画が多くの子供に受けていたかどうかは、よくわからない。この映画を喜んで観るのは、アニメ「ヤッターマン」を見て育った大人だろう。
しかし、大人だけで観にいくには、かなり勇気のいる映画だ。
たとえば「おれたちゃ天才だ。えい、ほ、ほ〜」と歌いながら、おばかな振り付けで踊るドロンボー一味を観るのは、かなり恥ずかしい。ドロンジョさま、ボヤッキー、トンズラーのトリオをつとめた役者3人は、このおばかな役を、快演(怪演?)していた。アニメ「ヤッターマン」の登場人物では、この3人のキャラの存在感が抜群だった。このような個性的なアニメキャラを実写版で再現した点で、映画版「ヤッターマン」は異例の成功作といえるだろう。
なお、「ヤッターマン」に関しては、ノラネコさんの絶妙な映画評がすでにある。この「おばか映画」にこれだけ読ませる評論を書ける人は、ノラネコさんくらいだろう。