日本生態学会盛岡大会終了

盛岡駅15時41分発新幹線はやて号に飛び乗り、羽田空港までたどりついた。はやて号(全席指定車)は満席だったので、仙台駅までは立ち席。文一総合出版刊「発芽生物学―種子発芽の生理・生態・分子機構」(ISBN:9784829910726)を読みながら時間をすごした。仙台駅で空いた席を見つけてすわった。その後、上野まで熟睡した。
まずは、すばらしい大会を準備・運営してくださった、盛岡大会実行委員会、大会企画委員会の方々にお礼をもうしあげたい。運営を担当した昨年と異なり、今年はゆっくりと大会に参加して、いろいろな講演・発表を聞くことができた。「マクロエコロジー」シンポではコメンターをつとめた。講演とともに、コメントも和文誌の特集に収録されるので、マクロ生態学への私の展望を文字にするつもり。
これからのマクロ生態学の重要な課題は、「歴史」を扱うことではないか。過去5万年の人類拡散の歴史を通じて、地球の生態系は大きく変貌した。地球上に人類活動の影響を受けていない自然など、はるか昔からなかったのだ。最終氷期最寒冷期(2万年前)が到来する前から、地球の生態系は人類の影響によって変貌を続けてきた。その意味で、地球の生態系は、明らかな「非平衡系」である。その理解には、平衡群集観はもはや不適切であり、「歴史」を正面から扱うアプローチが必要だと思う。
とくに過去1万5千年間の、農耕技術を獲得した人類の分散過程を理解することは重要だ。この時間スケールの中で、雑草の進化が起きたし、トンボやカエルなどが人間が作り出した「里山」環境に適応したし、家畜由来の病原体が人間に宿主転換して感染症を起こした。もちろん、ヒト自体も農耕がもたらした環境に適応進化した。
このような視点の重要性をコメントした。この内容で、和文誌のコメント記事を書く予定。
科研費・特別研究員フォーラム」は、せっかく学振審議役の宮じまさんに来ていただいたのに、参加者が40名程度しか集まらず、恐縮してしまった。しかし、参加者からは「非常に良かった。東京大会では、ぜひもっと多くの参加者が参加できる時間帯で開催してほしい」というご意見をいただいた。ぜひそうしたい。
宮じまさんに科研費・特別研究員について1時間話していただいたあと、私が20分ほど補足説明をした。この講演で使ったパワーポイント資料は、後日、私のウェブサイトで公開するつもりである。
公開講演会は、「数」という抽象的なテーマだったが、講演者はそれぞれに工夫して、わかりやすい講演をしてくださった。とくに「クマとブナの微妙な関係」についての講演は、内容が面白いうえに、講演の「技」も巧みで、多くの参加者が「とくに印象に残った講演」にあげられていた。参加者の感想文は、152枚(急いで数えたので多少の誤差はあるかも)。ほとんどのコメントがポジティブだった。
公開講演会の講演要旨集をかねて作られた本「生きものの数の不思議を解き明かす」(ISBN:9784829901410)は、カラー写真やイラストをふんだんに使って、とても魅力的に編集されていた。編集に時間をさいてくださったSさん、イラストを書いてくださったKさんに心からお礼もうしあげます。
普及のための本としては申し分なく良くできている。昨年出版された「森の不思議を解き明かす」(ISBN:9784829901359)とともに、ぜひ多くの方にご購入いただきたい。