益川さんおめでとうございます

ノーベル賞を受賞された益川さんとは、一度だけだが、京大で開催されたシンポジウムでご一緒したことがある。たしか、「5年後、50年後、500年後の科学」というテーマのシンポジウムである。当時京大にいた友人のT君から口説かれて、「5年後、50年後、500年後の科学」についての私の考えを話した。益川さんは、小説を書く構想について話をされていた。T君と、益川さんは京大の誇りであり、いつかノーベル賞を受賞されるに違いないと話したことを記憶している。いささか遅すぎたのではないかと思うが、お元気なうちに受賞されて本当に良かった。
小林・益川理論は、素粒子の分野では、世界を変えた業績(http://www.kek.jp/newskek/2003/mayjun/km.html)としてよく知られている。私は物理学に憧れたことがあるし、京大で物理に進んだ友人が何人かいるので、小林・益川理論というすごい理論があるのだという話はときどき聞いていた。しかし、その内容は、解説を読んでも悲しいかなまったく理解できない。今回も、新聞記事などでの紹介を読んだだけでは、いったいどのような理論なのか、ちんぷんかんぷんだ。
http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~ptpwww/index-j.html
で 小林・益川論文が無料公開されているのを見つけて、ダウンロードして、少し読んでみた。とても短い論文なので、字面を追うだけなら、すぐに読める。
式(6)が、従来の行列(カビボ行列)で、4つのクオークの相互作用を考えたもの。このモデルでは、CP-violationは生じない。小林・益川論文のポイントは、式(13)に示された3×3の行列(小林・益川行列)を考えたことにある。この行列は、6つのクオークの相互作用を想定したものである。この行列を見ると、確かに複素数虚数項が残って、行列の対称性が崩れている。
この2つの式を眺めたうえで、たとえば、http://www.sci.nagoya-u.ac.jp/kouhou/08/p6.htmlの解説を読むと、新聞記事を読んだだけよりは、少しわかった気持ちになれた。
もちろん、6つのクオークの相互作用を想定するとなぜ式(13)が導かれるかなど、基本的なことが理解できていないのだが、「CP対称性の破れ」が式(13)で表現されることを知っただけで、親しみがわいた。
益川さんは、風呂に入っているときに理論を思いついたという新聞記事を読んだ。確かにこの行列なら、6つのクオークを考えるというアイデアを思いついたとたんに、虚数項が残ることが読めてしまったのだろうな。