現代アメリカを知るための2冊

アメリカ合衆国はおそらく、歴史的な転機を迎えている。アメリカ合衆国が今後どのような変化をとげるかによって、日本をふくむ世界の歴史が変わるだろう。そのアメリカ合衆国の現状を知るうえで、次の2冊は必読文献だと思う。

前者は、合衆国の現状のルポを書き続けている著者の最新作。あとがきにはこう書かれている。

9.11で生かされたことをきっかけにジャーナリストに転向した私は、学校から生徒の個人情報を手に入れた軍にリクルートされた高校生たちを取材するうちに知ることになる。今起きていることは、あのテロをきっかけに一つの国が突入した「報復戦争」という構図ではなく、もっとずっと大規模な、世界各地で起きている流れの一環であることを。「民営化された戦争」という国家レベルの貧困ビジネスと、それを回していくために社会の底辺に落とされた人間が大量に消費されるという恐ろしい仕組みについて。

本書を読むと、イラク戦争に突入したアメリカがかかえる闇の深さに、戦慄させられる。それは、「民営化」という新自由主義的政策がもたらした、もっとも深く、もっとも暗い闇である。サブプライムローン問題の背景に、これほどの闇がひろがっているとは予想もしなかった。新幹線車中で読み終えたが、書評を書くには、この重いテーマについて考えを整理する時間が必要だ。いずれもうすこし詳しく書いてみたい。
後者は、民主党の大統領候補として注目を集める著者によるマニフェスト的著作。「ルポ 貧困大国アメリカ」を読んでから本書を読むと、前者で書かれている内容が決して誇張ではないことが行間から読み取れる。堤さんが書いているように、アメリカ社会は明らかに病んでおり、そしてイラク戦争の重荷にあえいでいる。しかし一方で、「民営化された戦争」を通じて巨額の利益を得ている企業もある。オバマ氏の行間には、舵取りの難しさについての苦悩がにじみ出ているが、それでもイラク撤退こそが問題の解決につながるという意見を表明していることには、希望がもてる。まだ読了していないので、こちらについても別に書く機会があるかもしれない。
今日は三重県松阪市まで来た。大学時代の同級生のT先生の招きで、明日は三重県の高校の先生たちに話をする。