さらば、カレーなる日々

4月から浅草橋にウィクりーマンションを借りて、論文執筆に重点を置く暮らしを続けてきたが、この暮らしもあと1日を残すのみとなった。明日で、マンションの契約が切れるので、明日の夜には福岡に戻る。あさってから8月上旬までは、キスゲ属の実験集団を使ったポリネーションの研究をするため、屋外に出る日が続く。
論文原稿のほうは、4編がほぼ完成し、あと5編の草稿が手元にある。なかなか進まないものだが、月1報のペースではある。キスゲ属のデータとりが済んだら、8月からはまた、論文執筆に専念しよう。
マンション暮らしの間は、ずっと自炊した。料理は嫌いではないので、なかなか楽しかった。研究室OBの勧めもあって、とくにカレーづくりにチャレンジしてみた。
ベースにしたレシピは、「カレー道」レシピ道場で、「参段」というトップランクに輝いた「南印度のママのチキンカリー」。
まず、「温めた鍋にサラダ油を入れ、ブラウンマスタードシード、シナモンスティックを加える。ふたをして弱火であたため、ブラウンマスタードシードがはじける音がしたら、火を止めて静かになるまで待つ。」
スタータースパイスとして使うブラウンマスタードの種子が、油の中でパチパチとはじけるのが楽しい。はじけたあとは、独特の香りが漂う。そこに鶏肉を入れて炒めると、ブラウンマスタードシードが肉にからまり、見た目にもおいしそうである。この料理法は、カレー以外にも応用がきく。
もともとのレシピでは、鶏肉に下味をつけるようには書かれていないが、塩・こしょう・にんにく・しょうが・だし醤油で手もみして、下味をつけておくほうが、絶対においしい。
ホールトマトの代わりに、生のトマトを刻んで使った。これも、おいしい。加工品のホールトマトは、私はあまり好きではない。
ココナツミルクを使うのが、このレシピのポイント。独特の甘みとコクがあり、とてもおいしい。
ペッパーは、最初はチリペッパーを使っていたが、実はチリペッパーはあまり辛くない。辛味を出すには、七味唐辛子が意外に良い。それでも物足りない人のために、「カイエンペッパー」を入手した。これは辛い。
鶏がらスープには、野菜を煮込んでおくほうが、おいしい。ただし、日本のカレーで定番のニンジンを使うと、どうしても臭みが残る。ハーブミックスのブーケガルニを買ってきて、少し加えたら、とてもおいしくなった。
私は甘党なので、最後にチャツネやマンゴーチリソースを少し加えて、隠し味の甘みを出している。また、少しレモンを加えると、酸味のアクセントがついて、おいしい。
メティシードは入手できなかったので、クミンで代用した。
クミンやコリアンダーは、パウダーを使っているが、パウダーはしばらく置くと酸化して、薬っぽい香りが強くなる。やはり、種子を乾煎りして、ミキサーにかけるのが一番なのだろう。短期間の滞在であり、料理道具をできるだけ購入しないようにしたので、ミキサーは使わなかった。福岡で、いつかミキサーを使って、種子からカレーを作ってみたい。
マイナーなスパイスを全部買い揃えるのは大変なので、スパイスミックスのガラムマサラを使ってみたが、新鮮なパウダーなら、クミンとコリアンダーだけでもかなり良い香りが出せる。
とはいえ、3ヶ月間で、今日はうまくできたと思えた日は、数日しかない。カレーは、甘味・辛味・塩味・酸味・苦味・旨味のブレンドと、さまざまな香りのブレンドからなる、複雑な味なので、その調合をマスターするには、かなりの経験が必要だと痛感した。
カレー道の修行はまだまだだが、残念ながら、修行なかばで、福岡に戻る。福岡に戻ってからも、修行を続けたいものだ。