予算凍結への疑問(続)

JAL機内にて。
科学振興調整費に採択された研究課題は、審査を経て、研究としての意義と必要性が認められているのだから、予算を交付したうえで、運用を厳しく点検するのが、行政としての責任ある対応だと思う。
財務省の予算凍結の狙いは明らかだろう。歳出削減である。予算凍結によって、本来なら7月1日から実施されるはずの研究を開始できなくなった。そのため、7月1日からのポスドクや研究補助員の雇用ができなくなった。消耗品や備品は予算の内示が遅れても、内示後に購入できるが、賃金はそうはいかない。さかのぼって雇用することはできない。文部科学省による積算資料の点検がいつまでかかるかは不明だが、見直し期間中の人件費は、確実に削減対象になるだろう。
凍結された予算の中には、女性研究者支援や、テニュアトラック制導入による若手研究者支援の予算もある。これらの予算で、いつから人が雇用できるのか、見通しは立っていない。
科学技術振興調整費でポスドクなどを雇用する場合、事前に名前をあげて積算資料を提出しなければならないはずだ。したがって、見直し・点検を行っても、書類上の不備は見つからないと思う。松本教授のように、雇用した学生の口座に振り込まれた賃金を再回収するやり方は、予算資料の段階ではチェックしようがない。
結局、松本事件は、財務省にとって、科学研究費を削減する格好の口実になったのだ。
先日書いたことの繰り返しになるが、文部科学省は、過度な「選択と集中」をみなおし、1件あたりの予算額を最適化したうえで、採択件数を増やすべきである。ごく少数の研究プロジェクトに巨額の研究投資を集中するより、より多くの課題に資源を適切に配分するほうが、研究開発の効率は高まるはずだ。