「飲むコラーゲン」は肌の健康になぜ効果がないのか?

というテーマに関して提出したもらったレポートを読んでいる。そのなかに、次のような記述が散見される。
「コラーゲンは分解されてはじめて吸収されるのであって、コラーゲンの形で吸収されることはない。しかし、コラーゲンを摂取することでコラーゲン合成の促進、それに伴って表皮のターンオーバーが活性化されるという報告もある。コラーゲンを飲むことによりコラーゲンをより多く摂取でき、健康的な皮膚を保つ美容効果があるかもしれないが、その作用機序は明らかではない。」
明らかに、どこかの健康食品メーカーのウェブサイトからコピーしてきた記述と思われる。そこで、「コラーゲン合成の促進」で検索をかけてみたら、すぐにネタがわれた。「飲むコラーゲン」を製造・販売している、とある企業のサイトに、次のような記述があった。

Q. 健康食品の「飲むコラーゲン」の効用について教えて下さい。
A. 「飲むコラーゲン」は正しくは「コラーゲンの低分子分解物」です。皮膚真皮には多くのコラーゲンが含まれており、表皮組織の構造維持に役立っています。そして、皮膚のコラーゲンを作る能力は歳をとるにつれて低下してしまいます。コラーゲンを摂取するとコラーゲン合成の促進、それに伴って表皮のターンオーバーが活性化されるという報告もあります。飲むことによりコラーゲンを多く摂取でき、健康な皮膚を保つ効果があるかもしれませんが、その作用機序は明らかではありません。

「コラーゲンの低分子分解物」は、ペプチドである。消化器官中のペプチドが、皮膚の細胞内のコラーゲン合成を促進することは、まずあり得ない話である。吸収されたペプチドが、いったいどうやって皮膚細胞までたどりつくというのだ。
上の文章は、批判されたときの防御線をはっていると思う。第一に、「摂取」という表現と「飲む」という表現をたくみに使い分けている。「摂取」が何かは特定されていないので、いかようにも言い訳できる。「摂取」は、皮膚への直接注入を意味するともとれるのだ。第二に、「飲むことにより・・・効果があるかもしれませんが・・・その作用機序は明らかではありません」と、根拠がないことを断わりつつ、効果があることを匂わせている。
歯学部のYKさん、医療の現場に出るまでには、こういう文章がインチキであることを見抜けるようになってね。