今日のサイエンス:「タコ記事」に加えキツネが大問題

上記のタコ記事は、サイエンス3月25日号の短報(Brevia)に掲載されていました。この号には、他にも面白い論文が出ていますが、とくに私が注目したのは、次の論文。

Introduced Predators Transform Subarctic Islands from Grassland to Tundra
D. A. Croll, J. L. Maron, J. A. Estes, E. M. Danner, and G. V. Byrd
Science 25 March 2005: 1959-1961.

著者らはアリューシャン列島の生態系を比較研究し、キツネが導入され、定着した島では、植生の退行が起きていることを報告しています。何で動物食のキツネが植生の退行を引き起こすの? と、まさに「キツネにつままれた」ような気持ちで読んでみると、海鳥の捕食の影響で、海鳥が陸上生態系に運ぶ窒素などのフローが減り、栄養素が不足したためらしい。土壌や植物が保有する窒素の安定同位体比を調べてみると、キツネがいる島では、確かに海由来の窒素が、有意に減少している。
「タコ記事」同様に、意外な結果であり、しかも従来知られていない生態系のカスケード効果を発見した点で、新しい。外来種の生態系への影響を説得力を持って示した点では、まさに時宜を得た研究。また、GIS安定同位体比分析を組み合わせて、大規模スケールの生態系比較に成功した点も、高く評価できます。さすがはサイエンスに載るだけの論文。
同じ号には、Place mattersと題する、新刊の書評も。早速、アマゾンに注文。leeswijzerさん、日本語の書評をよろしく。

Frontiers of Biogeography: New Directions in the Geography of Nature
Mark V. Lomolino and Lawrence R. Heaney, Eds.
Sinauer Associates, Sunderland, MA, 2004. 448 pp. $79.95, £51.99. ISBN 0-87893-479-0. Paper, $49.95, £31.99. ISBN 0-87893-478-2.

おっと、もう9時半や。日暮れて道なお遠し。とほほ・・・。