スギの大量伐採は温暖化を促進するか?

今日の毎日新聞3面は、「妙案なくつらい春」と題して、花粉飛散量急増の見通しと、政府の花粉症対策をとりあげている。その記事の中で、納得がいかない説明があった。スギの大量伐採は、温暖化対策に逆行するから、できないというのである。

厄介者だとスギを大量伐採するわけにもいかない。二酸化炭素の吸収量がもっとも多い木の一つで、地球温暖化防止に役立っているからだ。植栽面積あたりの吸収量はブナなどの倍近い。

毎日新聞が3面で堂々とこう書くようでは困るなぁ。伐採しても森林に戻せば、森林面積は減らないから、将来的な蓄積量は変わらない。伐採すれば一時的には吸収量は減るが、広葉樹であれスギであれ、林が成長する過程では、吸収量は増える。そして、成熟した林では、ほとんど吸収しなくなる(厳密に言えば、吸収と放出が均衡して、新たな吸収がなくなる)。スギとブナを比べて、スギの吸収量がブナなどの倍近い」というのは、若いスギ林とブナの原生林を比べたときの話だ。
そもそも、温暖化対策を吸収量だけで考えてはいけない。吸収量を増やそうと思えば、原生林を伐採して、植林すれば良い。数年で、確実に吸収量が増える。しかし、蓄積量は激減してしまう。ケナフ騒動のときにも、吸収量と蓄積量を取り違えた議論があった。温暖化対策として重要なのは、蓄積量を増やすことである。
ちなみに、農水省が遺伝子組み換えで開発を進めている「花粉症の症状を和らげるコメ」については、厚生労働省が「効能をうたう以上、医薬品の可能性がある」という見解を出したそうだ。毎日新聞の記事には、『医薬品となると、安全性審査に時間がかかり、薬局などでしか売れなくなる。農水省は「食品だ」と反論した。』とあるが、この件に関しては、厚生労働省の主張が妥当だと思う。いろいろな薬の成分をふくむコメを開発することは、技術的には可能だ。それらをぜんぶ食品として扱うのは問題だ。認可には、医学的な判断が必要である。
「花粉の少ないスギ品種」については、関東を中心に約24万本植えたそうだ。さらに今後5年間で、60万本植える計画らしい。一方、全国のスギの本数は、100億本をこすという。100万本を植え換えて、ようやく1%。花粉症に悩む人は、これでは救われない。新品種「爽春」については、建材として適切か否かの研究もまだこれからだそうだ。場当たり的だなぁ。

人気Blogランキング