「生態学I」試験会場にて

試験開始から1時間経過。会場に持ち込んだ、学位論文の原稿(英語)と卒業論文の原稿(日本語)に赤字をいれたが、まだ30分ある。電話も呼び出しもこないと、仕事がはかどるなぁ。
生態学I」は1年生向けの専門科目である。試験問題は4問。第1問は、競争方程式を使い、2種の共存条件を求める問題。個体群生態学の初歩の初歩である。ノート持込可だから、授業に出席した学生は解答できるだろう。これだけでは理解の程度が測れないので、片利共生の場合の式を書いて、共存するかどうかを判定せよという問題を出した。片利共生の場合は授業ではとりあげていないので、応用力が問われる。理解している人には簡単。ノートまる写しをもくろむ学生には、難題に違いない。
教科書にはほとんど書かれていないが、片利共生の2種は、安定して共存する。植物では、片利関係はかなり一般的ではないかとつねづね思っているのだが、あまり注目されていないようだ。
第2問は、ESS性比(オス:メス=1:1)を求める問題。去年も出題したし、ヤマをはった学生も多かったことだろう。今年は、息子と娘の生存力が違う場合の式を書いて、計算してもらうことにした。私が最初にESS性比を学んだとき、息子と娘の生存力が違っても、ESS性比は変わらないという点が、とても新鮮な驚きだった。そういう驚きを、授業で伝えたつもりだが、さて、どこまで伝わっているだろうか。
第3問は、授業でとりあげた4つのテーマから2つを選んで要約する問題。授業に出ていれば、及第点はとれるはず。
第4問は、分散と共分散を説明せよ、という問題。今年、はじめて出した。生態学そのものの問題ではないが、生態学の理解には必須の統計量なので、毎年授業で時間をかけて説明する。それでも、研究室配属のころには、すっかり忘れている学生がいる。試験に出せば、学生の意識が高まるだろうと考え、出題した。
大学受験でもそうだが、出題されないテーマは、勉強の対象にされない傾向がある。ゆがんでいると思うが、これが現実である。大事だと思うテーマは、出題したほうが良い。
あと8分だ。90分では、やや時間不足かもしれないが、私は11時10分の便で上京して、午後から環境省の会議に出なければならない。時間どおりに終わろう。