昼休みのメモ:分布境界に関するHaldane仮説

たまには、研究の話題。分布境界に関するHaldane仮説を理論化したKirkpatrickとBartonの論文を、電車の中で、読んでいる。拡散方程式の「∂/∂」のオンパレードには、「脳がずらずらする」(by ジン子 in 不機嫌なジーン)が、毎日眺めていると、悟りの境地に至るから不思議なものだ。形質値zの時間変化は、3つの「∂/∂」からなる。一つは、環境傾度上のランダムな遺伝子流動による変化。拡散係数は、親子の距離の分散の半分。そりゃ、そうだろう。2番目の項も遺伝子流動による変化だが、こちらは環境傾度(位置x)上の密度(n)の変化による成分だ。個体の位置がニッチの中心からはなれると、密度が低下するので、ニッチの中心に向かう遺伝子流動よりも、ニッチの中心からの遺伝子流動が卓越する。この「非対称性」がモデルのポイントで、この効果のために、ニッチの辺縁部での淘汰による適応進化が減速する。三番目の項は、淘汰による形質値の変化。形質値の「∂/∂」の係数は、形質の相加的遺伝分散Gである。三番目の項の+方向への動きを、二番目の項が引き戻す、という構図である。この条件をシミュレーションでどう表現するかは、達人の技に期待しよう。