今津干潟合同調査終了

3日間にわたる、今津干潟の合同調査が終わった。夜7時すぎから、打ち上げ。学部をこえた集まりなので、日ごろの研究室での会話とは違った刺激が楽しめる。昨年同様、深夜まで盛り上がり、1時半ころにようやく片付けが始まった。当然のことながら、タクシー帰宅。車中、暇なので、ブログを書いている。
今年は、定量調査よりも、できるだけ多くの生物を採集する定性調査が中心だった。マダコやアナゴがとれたり、みお筋でアマモの生育が確認されたりした。予想した以上に、さまざまな生物が残っていることがわかった。
これから、同定作業が進められる。DNA分析や、安定同位体比分析も進む。結果が楽しみである。
打ち上げコンパに参加したメンバーの中にも、このブログを読んでくれている人がいた。よく書けますね、と言われたが、ほれこのとおり、タクシーの中の暇つぶし。こうやって書いておけば、記録に残る。書く癖をつければ、書くことは、苦にならない。
当人としては、息抜きに書いていることが、読者に参考になるのなら、こんなにありがたいことはない。
さて、もうすぐ自宅に到着。ではまた、明日。

特定外来生物第2次選定

今朝の毎日新聞を見て、びっくり。話題・ひと・暮らし欄に、「ウシガエルカダヤシなど新たに29種 『特定外来生物』輸入・飼育禁止 環境省」という記事が出ている。外来生物法にもとづく「特定外来生物」の2次選定に関する報道である。
記事の本文には、「環境省は9日、食用として流通するウシガエルなど29種類を規制対象の「特定外来生物」に指定する方針を決めた」とある。
私は今年度から、植物種の2次選定に関する委員を引き受けた。最初の委員会には出席して、2次選定にあたっての基本的な考え方について私見を述べた。会議のあと、環境省の担当官に、私は日本生態学会自然保護委員会の委員もしており、学会でも意見を聞いたうえで、広く合意できる方針を考えていきたいという趣旨の意見を申し上げた。
2回目の会議は、日程調整の段階で、私が出席できない日に設定された。このような場合には、事前に資料が届けられ、書面で意見を述べる機会があたえられるのが通例である。しかし、会議の日程が迫っても、何の連絡もなかったので、こちらから問い合わせた。その結果、2回目の会議では、外来種拡大の risk assessmentについてのヒアリングなどが予定されているが、実質的な審議はしない、私の意見については、別途に日程を設けて聞きたい、という返事だった。
ところが、今日の報道である。植物に関しては、2次指定候補として、アカウキクサ属・オオフサモ・ボタンウキクサ・オオカワジシャ・Spartina anglicaの5種があげられている。「7月中に正式決定する」とある。
次回の委員会は、7月25日に予定されている。私は、ウィーンの国際会議から帰国し、成田から霞ヶ関に直行して、この会議に参加する。正式決定はこの会議でということなのだろう。
しかし、選定委員の意見も聞かずに、2次選定候補を報道機関にもらすのは、困る。記者が踏み込んで書いた可能性もあるが、その可能性を想定して対応するのが、行政の責任である。
第2次選定について、日本生態学会からは、セイタカアワダチソウ・シナダレスズメガヤなどについて、指定するように要望書を出している。これらの種を指定するかどうかは、よく議論する必要がある問題だ。学会からこのような要望書が出ている以上、生態学の研究者ともよく合意形成をはかりながら、指定作業を進める必要がある。
私は、この問題に関する議論をできるだけオープンにして、もっとも適切な方針を探っていくつもりでいた。それだけに、今回の環境省の対応には、疑問を感じる。
済んでしまったことは仕方がない。このブログの文章を、環境省と自然保護委員会に伝え、事態の正常化をはかるつもり。やれやれ、である。
この経過をオープンにせずに、環境省とコンタクトして調整するのが穏便な対応だが、環境省の選定委員と自然保護委員会の委員をかねる私がとるべき道は、公開可能な情報をすべてオープンにすることだと考えている。私の意見・態度が、どちらの側からも、また第3者からも、正確に理解されることが肝心だと思っている。

外来種2次選定問題

環境省の担当の方と電話で話をした。済んでしまったことは仕方がないので、次回からは、欠席する委員には事前に説明し、意見を言う機会を作ってほしい。会議運営の基本である。
9日の会議は、各分類群の選定委員会の座長会で、専門家会議と呼ばれるている。私は座長ではないので、この会議には出ていない。その分責任が軽いのだが、委員を引き受ける以上は、結果に責任を持ちたいと思う。
選定委員を引き受けてから、外来生物法関連の膨大な資料にざっと目を通した。その結果、日本生態学会の要望書にリストされている、セイタカアワダチソウ・シナダレスズメガヤについて、指定を急ぐ必要があるのだろうか、と考えるに至った。日本生態学会の自然保護委員なので、いまさらこんなことを言い出すようでは困るのだが、これまで外来生物法については不勉強だったので、自然保護委員会に提案された要望書案を見た時点では何の疑問も感じなかったのだ。
今日、自然保護委員に対して、次のようなメールを送った。

私は植物種に関しては、少数でも良いので、指定した種について徹底した防除対策をとるほうが良いと考えています。開発に関しては、止めれば自然が守られますが、外来種に関しては、指定するだけでは減りません。重要なのは、生態系に悪影響を及ぼしている外来種を減らすことだと思います。植物に関しては、やる気になれば、徹底駆除が可能です。それをやらずに、指定種だけ増やすのでは、指定しても対策をとらないで良いという行政上の実績をつくってしまいます。ミズヒマワリなど、すでに指定した種については、早期に駆除を完了すべきです。

種の保存法に関しては、植物を特定希少種に指定しても、保全対策がとられないという悪しき実績ができてしまいました。この二の舞にしたくないのです。

植物レッドデータブックに記載されている絶滅危惧種の絶滅リスクを高める要因として、外来種の影響がほとんど指摘されていないという点も、「少数指定でしっかり駆除」という判断をしている理由です。動物の場合には、外来種の進入で在来種が滅ぶというケースが各地であります。したがって、外来種の駆除は、緊急の課題だと思います。したがって、たとえばセイヨウオオマルハナバチをできるだけ早期に指定することに賛成です。

このような動物に比べ、植物は、もう少し時間をかけてよいと思っています。とくに、セイタカアワダチソウのように、私が中学生のころから日本中に広がっていたものの指定を急ぐより、現在はまだ進入初期で、急速に分布を拡大しつつあるものの指定を優先し、これらについて徹底駆除を行なうのが良いという判断をしています。

この意見については、賛否両論あるだろう。ブログ読者の方々からも、ぜひご意見をいただきたい。
なお、私はセイタカアワダチソウやシナダレスズメガヤの防除に消極的なわけではない。今日も、九大新キャンパスで、セイタカアワダチソウを刈ってきた。
環境省には、セイタカアワダチソウやシナダレスズメガヤの防除をどのように進めるかについて、方針を具体化してほしい。現実的な案は、防除が急がれる湿地や河原をリストし、そこへの防除計画をたてて公表することだろう。
そのうえで、防除計画を実施するためには、指定したほうが予算をとりやすいというのであれば、指定したほうが良いと思う。指定しないが、予算はとって防除を進めるということであれば、それで良いと思う。
肝心なのは、防除対策を実行することなのだ。