大協力時代の到来

グローバル化が進む現代は、しばしば「大競争時代」と形容される。確かに、競争がグローバル化している時代ではある。しかし一方で、協力もまたグローバル化している。したがって、私たちが生きているこの時代は、「大協力時代」の幕開けでもある。
先月はアブダビで、今週は横浜で、世界各国の研究者と議論を交わした。来週開催される日本生態学会福岡大会にも、欧米やニュージーランドから第一線の研究者が参加してくれる。月末には私がパリに飛んで、議論を続ける。このような日々を送るにつけ、私が感じるのは「大競争時代」ではなく、「大協力時代」の到来である。
4日間のワークショップは、参加者の献身的な努力によって、成功裏に閉会した。日本側のオルガナイザーとして活躍した佐藤君には、参加者から心のこもったプレゼントが贈られた。参加した世界各国の研究者が自慢の料理のレシピーを書いて、小冊子を作り、各国の国旗をアレンジした表紙をつけて彼に贈ったのである。このアイデアには、感服した。
今回のワークショップには、Jim Clarkのような大家だけでなく、大学院生を含む若手研究者が高率で招かれていた。この人選は、とても良かった。これから世界をリードしていく若手のネットワーキングに貢献できたし、そのネットワークに日本人の若手研究者が主体的に参加する環境ができた。
「協力」と言えば聞こえは良いが、世界各国の研究者から評価される貢献を、国際的なネットワークに対してインプットし続ける必要がある。日本独自の路線で競争に一定の勝利を収めることよりも、世界に開かれたネットワークの中でリーダーシップを発揮することのほうが、ずっと難しい。前者は一方的な発信で構わないが、後者は対等のオリジナリティにもとづく双方向のコミュニケーションを必要とする。これまでの日本人研究者はこれが苦手だった。
今回のワークショップに参加した日本人の若手研究者は、独自の研究成果に依拠しながら、双方向のコミュニケーションを実現していて、とても心強かった。
ワークショップは1年半後、3年後の目標を設定して閉幕した。このワークショップを通じて作られたネットワークが3年後にどんな成果を生み出すか、楽しみである。