テーブルマウンテンの斜面を登る

yahara2007-03-27

ホテルの予約はDIVERSITAS事務局にまかせたので、いったいどこに泊まるかもよく理解せずにケープタウンまで来てしまった。来てみると、ホテルのすぐそばに、いかにも面白そうな岩山があるではないか。地図をチェックすると、何と有名なTable Mountainの東麓である。フロントで、この近くを歩き回っても大丈夫かと聞くと、”Quite safe. Turn left and then you can find a big shopping mole…”などと言う。地図を指差して、”Can I walk around in this Newlands Forest?” と聞くと、いぶかしげな表情で、”Y, Yes”という返事。これは行くしかない。
外務省の「海外安全ホームページ」には、「ケープタウン市街地及びケープフラット地域においては、強盗、窃盗、ひったくり、置き引き等の一般犯罪が増加しています」とあるが、私の海外経験によれば、山の中ほど安全な場所はない。早速作業ズボンに着替え、地下足袋に履き替えて、テーブルマウンテン東麓のNewlands Forestに向かった。
Newlands Forestの入り口の、”Table Mountain National Park, Volunteer Fire Fighting Unit”の事務所に立ち寄って、森の中を歩きまわっても良いかと聞くと、一人で歩くのか、メインルートからはずれないように注意しろ、と忠告された。
しかし、メインルートを歩いていると、ときどき人間に会う。人間ほど危険な動物はいない。麓の散策ルートから、テーブルマウンテン方面に向かうと思われる細い登り道を見つけて、山に入った。それからは、人に会うこともなく、快適だった。
国立公園の森の入り口は、外来種だらけである。アジア系では、トウネズミモチ、クリ、スイカズラ、ツボクサ、などなど。しばらく登ると、自然度の高い植生になった。
麓の林の優先種は、マツである。要するに、マツ林。林床の樹木は、種こそわからないが、見慣れた形のものが多い。沢に沿った、やや湿った場所には、イチジクの野生がある。イチジク属の一種というのではなく、種としてのイチジクそのものだ。樹種にヤマモガシ科が目立つところは、さすがに南アフリカだが、景観的には、メキシコとさほど変わらない。
しかし、おそらく山火事で高木が消失したと思われるギャップ的な場所では、写真のような、独特の低木があらわれた。山火事は、ここ南アフリカの植物多様性を維持している重要な要因のひとつかもしれない。
下から見上げるととても登れそうにない岩山だが、鞍部にむかう小道を登ると、峠直下の斜面にも小道が見えた。上まで登れそうだったが、途中で引き返した。中腹の谷を横切ったあと、石の上に、中型哺乳類の足跡が点々と続いているのに気づいた。谷の水で足を濡らしたあとに歩いたようで、水がまだ渇いていない。まさか、昼間に歩くヒョウはいないと思うが、十分な情報を持っていない。周囲をみても気配はなく、獣の匂いも残っていなかったが、用心したほうが良いと考えて引き返した。
 ※足跡の主は、おそらくバブーンである。
メインルートに下りたところで、二人連れの若者にあった。こういうときが一番緊張する。昼間の獣はふつう、人間を恐れて逃げていくが、人間はしばしば人間をおそれない。もっとも、私は作業ズボンに地下足袋という格好なので、観光客と思われることはまずないだろう。
山から戻ったあと、シャワーを浴びてから、書類を改訂。緊急の仕事にも目処がついた。
夕食をとるためにレストランに行くと、入り口でDIVERSITAS科学委員会参加者の一団に会い、一緒に白ワインを飲んだ。さほど空腹ではなかったので、結局夕食は省略した。3食決まった時間にとるのが私の健康法だが、海外に出るとリズムが狂う。まず、機内でなんども食事やスナックを給仕されるので、食べすぎ状態で目的地に着く。リズムを回復するには、神経質にならないことが肝心だと思う。量的には食べすぎ状態なので、今夜はワインだけでも良かろう。
さて、明朝は8時15分出発。現地時間では0時をまわったので、そろそろ寝よう。