行政と研究者の「縦割り」

今日は、植生防護柵(シカが摂食しないように林床植生を囲む柵)を新たに設置する場所の下見をした。トランセクトによる分布調査結果から、希少種の分布が集中している場所を選んで、候補地に出かけてみたが、なかなか適当な場所が見つからない。屋久島の地形は険しいので、希少種が多い沢筋で、柵を設置できる場所を選ぶのは、容易ではないのだ。いまや観光スポットになっている、ヤクスギランド内に、有力な候補地を見つけた。遊歩道のすぐそばなので、柵を設置することに関しては、林野庁環境省とよく相談する必要がある。
屋久島の森林は、大部分が国有林内にあり、また、その大部分が国立公園に指定されている。国立公園の管理と国有林の管理は密接に関連しているので、本来なら一元的管理がのぞましいと思う。しかし、現状では、2つの行政組織が管理している。当然のことながら、いわゆる「縦割り」の問題がある。私は、総合的な「屋久島生態系保全計画」を策定する必要があると考えているが、このような計画策定をどちらが担当するかは、容易には決められない問題である。このような「縦割り」の溝を埋めるのは、研究者のひとつの役割かもしれない。
行政の「縦割り」の問題は、よく指摘されることだが、研究者側にも「縦割り」問題はある。屋久島には、多くの研究チームが調査に入っているが、研究チーム間の連絡は、ほとんどとれていないのが実情だ。行政の「縦割り」を批判する前に、研究者の責任においてこの状況を改善する必要がある。
今回、森林総合研究所のプロジェクトの現地報告会と、私のプロジェクトの現地報告会を、環境文化村研修センターの公開講座の一環として、連続して開催する。このような連携をもっと深める必要がある。この連携実現にあたっては、ブログが活躍した。私がこのブログに書いた記事がきっかけとなって、互いに連絡がとれ、相談が進んだ。
このような連携を発展させて、「屋久島学会」を毎年屋久島で開催できないかと考えている。今回は、そのための第一歩である。