シカと人と森の関係をめぐるシンポジウム(その2)

次は、私が代表者をつとめる環境省環境技術開発等推進費プロジェクトの報告会。調査地である屋久島で開催する。島の人たちと研究成果を共有し、ヤクシカの増加という問題にどう対処するか、一緒に考えようという集まりである。

屋久島生態系の保全−希少植物とヤクシカの動態を中心として−

日時:平成17年10月8日(土)19:00〜21:30
場所:屋久島環境文化村センター・映像ホール(上屋久町宮之浦823-1)
共同主催:環境省環境技術開発等推進費プロジェクト「地域生態系の保全・再生に関する合意形成とそれを支えるモニタリング技術の開発」、屋久島環境文化財
呼び掛け範囲:一般

プログラム

19:00 矢原徹一(九州大学教授):屋久島の希少植物に迫る絶滅の危機
近年、いくつかの屋久島の固有植物・希少植物が激減しています。そこで、現状を正確に把握するために、全島規模での植物の分布調査を実施しました。その結果から、ヤクシカの摂食が植物の減少要因になっている証拠を示し、どうすれば保全できるかについて考えます。

19:30 千葉かおり((財)自然環境研究センター主任研究員):屋久島の林床植生の減少とヤクシカ摂食の関連
近年、シカの個体数が増えた地域では従来の植生が失われたり、変化した例が報告されています。屋久島ではどうでしょうか? 安房地域での調査結果から、林床植生の変化とヤクシカの摂食との関係を考えてみます。

19:50 立澤史郎(北海道大学助手):ヤクシカの増加傾向と個体群管理のための課題
ヤクシカが増えていると言われますが、島内のどの地域でどれくらい増えているの でしょうか。10年前と現在のカウント結果などを比較し、この疑問に答えながら、ヤ クシカ個体群管理のための課題を考えます。

20:10 休憩
20:20 松田裕之(横浜国立大学教授・知床世界遺産地域科学委員会委員):ニホンジカ管理のあり方ー知床から屋久島まで
 北海道では、個体数の不確実性を考慮した「順応的なシカ管理」により、いったんは個体数を減らすことに成功しました。世界遺産に登録された知床では、シカ個体数を自然の遷移に委ねるか制御するかの議論が続いています。管理における科学者の役割と地域のモニタリング体制の重要性について知床・北海道と屋久島を対比しながら紹介します。

20:40 パネル討論 屋久島におけるニホンジカ管理・植生管理のあり方 矢原徹一・立澤史郎・常田邦彦((財)自然環境研究センター研究主幹)・松田裕之・屋久島在住者

21:30 閉会