100年の森づくり

第3回100年の森づくりフォーラムに出席するため、熊本に向かっている途中である。今日は、空は飛ばずに、陸路。
『100年の森づくり』事業開始にあたっては、コンセプトをしっかり議論して、『100年の森づくり』の提案文書を作った。グリーンヘルパーの活動で経験を積んだ市民と、私や鷲谷さんで議論して作ったこの文書は、他の森づくりの活動にも参考になるところが多いと思う。文書は次の4つのセクションからなる。

  • 『100年の森づくり』の提案
  • 『100年の森づくり』の規模と条件
  • 『100年の森づくり』の方法
  • 『100年の森づくり』のにない手

以下はその要約である。

日本はもともと森に恵まれた国でした。
森の『緑と水と土』が織り成す生態系が資源を循環させ、長い間日本人の暮らしを支えてきましたが、わずか100年足らずの間にその『緑と水と土』が失われてしまいました。
『100年の森づくり』は100年後の未来への遺産として、親子三世代を超えて引き継ぎながら、都市に『緑と水と土』を取り戻す市民活動であり、『人と森の復縁』をめざす取り組みです。
『100年の森』の規模と条件は、都市あるいは都市近郊に新たに創る森であり、環境の多様性に必要な「水辺」のある1ヘクタール規模の「小さな森」(サテライト)と、10ヘクタール規模の「大きな森」(コア)の2種類の森を組み合わせ、ネットワークでつなぎます。
『100年の森づくり』の方法は、「ふるさとの木と土によるふるさとの森づくり」を原則とし、自然の復元力を手助けすることにより、森の蘇る速度を速める方法を提案します。
森を形づくる高木のうち、優先種である常緑のシイ・カシ類(シイ類・アラカシなど)や落葉性の種(コナラ・クヌギなど)、高木に育つ多様な種(クスノキ科など)の苗を育てて植えることで、多様性のある森を蘇らせることが可能です。
苗を育てるための種は、近隣地域に残された森で採集することを原則とし、同時に落ち葉や土を運ぶことで土壌生物の移動を手助けすることを提案します。
『100年の森づくり』の担い手は、都市に暮らす市民です。そのため、市民による森づくり組織に、行政・企業・専門家がそれぞれの立場で参加・協力しあえる環境整備が必要です。
『100年の森づくり』は三世代を超えて取り組まれる事業であり、したがって森づくりを担う次の世代の育成が必要です。
また、『100年の森づくり』事業にあたっては、地域住民との合意形成を十分に図りながら進めることが重要です。
都市の暮らしは、物質的な豊かさが集約された環境ですが、決して心豊かな暮らしとは言えません。これからの100年は、都市に自然を再生することが要求される時代になると考えます。
その方向に向けた新しい実験として、私たちは『100年の森づくり』を提案し、多くの方々に呼びかけ、ご賛同・ご協力をお願いします。

日本では、森林は必ずしも減少していない。減少が著しいのは、草原や湿地である。しかし、都市域では森林が減っているので、都市の中に森づくりを進めようというのが、このプロジェクトの趣旨である。
熊本市は森に隣接しており、市内にも森が点在している。ムササビが棲む森もある。このような森をつないでいけば、もっと魅力的な都市になると思う。今日は熊本市長も参加される予定である。『100年の森づくり』発祥の地として、熊本市の名を後世に残したいというメッセージを、参加者に伝えよう。