はじめてのマレー半島調査・はじめてのGCOE修了式

過密きわまる年度末のスケジュールを乗り切り、いよいよ新年度。週末はカンボジア・ボコー国立公園のクスノキ属植物の同定作業をして過ごしました。8種のうち2種は新種と判断。今日は午前中に環境省を訪問し、生物多様性プロジェクトに関する打ち合わせ。午後から、九大東京オフィスで、4月23日の公開シンポジウム「自然共生社会を拓くプロジェクトデザイン」についての打ち合わせ。4時からは日立の方と打ち合わせ。充実した新年度のスタートです。
日本生態学会大会参加の直後にマレーシアに飛び、マレーシア森林総合研究所の植物標本室で標本を調べたあと、18-20日にはフレーザーズ・ヒル(Fraser's Hill)を訪問し、トランセクト調査をしました。フレーザーズ・ヒルは、クアラルンプールから車で北に約2時間半の位置にあり、標高1200m程度の山間部に古くからリゾート地が開かれています。植物がよく調査され、自生植物リストも発表されています。この場所で発見された植物が多く、日本でいえばちょうど栃木県日光に相当する場所です。ただし、日光より種多様性が高く、また固有種が何種も知られています。古くからリゾート地として利用されているため、最近では確認されていない種もいくつかあります。アカネ科のChassalia bracteata Ridl.もそのひとつで、1911年に発見されて以後、誰も再発見できず、1998年の論文では絶滅した可能性が高いと記されていました。そのChassalia bracteataを、再確認しました(以下の写真)。

また、少なくともマレー半島新産、もしかすると新種かもしれないクスノキ属の高木を発見しました。樹高が高すぎて、15mの竿でも葉がとれませんでしたが、大きな枯れ枝で葉の形態を確認し、緑色をしている落ち葉をひろって標本にしました。ベトナムから報告されている種にそっくりですが、類似の種はマレー半島では知られていません。フレーザーズ・ヒルにはまだまだ貴重な植物が残されていそうです。6月に再訪問して、より徹底した調査をする予定です。
マレー半島調査から帰国後、4月25日には、グローバルCOEプログラム「自然共生社会を拓くアジア保全生態学」第一回修了式を開きました。堅苦しい修了式ではなく、お茶菓子を用意して「ティーパーティ」を開き、修了者代表5名に、エピソードをまじえた15分のプレゼンテーションをしてもらいました。とても楽しい「ティーパーティ」でした。「スーパープレゼンテーション」を目標に、楽しくデザインされたプレゼンを、というお願いをしたのですが、どのプレゼンもとても面白く、参加者に好評でした。私は、2回も申請に失敗し、3回目でやっと採択された経験を話し、この経験から得た教訓にもとづいて、説得力を高めるにはどうしたら良いかという話をしました。また、一度や二度の失敗であきらめてはいけない、というメッセージを送ったつもりです。修了者の今後の活躍を期待しています。