洪水のさなかのロイカトン祭り

yahara2011-11-14

タイから帰国したので、いろいろな人から、洪水は大丈夫だったかと尋ねられる。私が滞在したチェンマイは、バンコクからは700キロ北にある。9月28日の大雨の影響により、市内の一部で腰の高さまで水位があがる事態に至ったが、すぐに水は引いた。10月中旬にも再度洪水が起きたが、その影響からも19日には復旧した。
Flora of Thailand meetingの会期中に、タイ国中が祝うロイカトン祭りが催された。これは、ランやキクなどの花で飾ったバナナの幹の輪切り(写真)を川に流し、川に感謝するお祭り。日本の灯篭流しによく似ている。毎年11月の満月の夜に開催される。
27年前は、山の中の小さな村でこの祭りに出会った。川を流れるデコレーションがとても幻想的だった。また、タイ国民誰もが知っている「ロイカトンの歌」を歌い、踊る輪に加わったのを、よく覚えている。
チェンマイでのロイカトン祭りでは、川岸に大勢の市民が押し寄せ、さながら花火大会のような賑わいだった。実際に花火が打ち上げられた。また、デコレーションを川に流すだけでは飽き足りず、ろうそくをつけた提灯を空に飛ばしていた。たくさんの提灯が空に舞い上がる光景は、遠くから見るには幻想的だが(→http://www.youtube.com/watch?v=5nyJJoUM83c)、提灯をあげる現場に行くと、危険を感じた。何しろ、ものすごい人ごみの中で、多量の提灯が空に飛ばされる。燃えるろうそくが作り出す上昇気流で提灯は空に飛ぶのだが、その安定性は必ずしも良くない。飛ぶのに失敗し、落ちてくる提灯は後を絶たない。燃え上がった提灯が一度は私をめがけて落ちてきたので、肝を冷やした。チェンマイ市民は慣れたもので、足で踏んで消していた。電線にひっかかって燃え上がっている提灯を竿で叩いて落としている光景も目撃した。
イカトン祭りは、洪水のさなかのバンコクでも一部の地域ではおこなれたようだ。川に感謝するお祭りが洪水のさなかで行われるのは最悪のめぐりあわせだが、バンコク市民はこの祭りを祝うことで、つらい状況をのりこえる力を得たに違いない。
チェンマイで会ったバンコクの研究所の人によれば、研究所の1階は、胸くらいの高さまで浸水しているそうだ。DNAシークエンサーなどは4階にあるから被害を受けていないそうだが、復旧にはかなり時間がかかりそうだ。
日本の新聞では、生産拠点の工場被害しか報道されていないようだが、もうすこし市民目線の報道がほしいものだ。
バンコク週報によれば、11月10日時点で洪水関連の死者数は533人、冠水が続いている都県は24、被災者数284万人、浸水農地が17万6000ヘクタールとなっている(http://www.bangkokshuho.com/news.aspx?articleid=13181)。
現在の排水能力から試算して、20日すぎには水が引くという見通しが発表されているが、この見通しどおり状況が好転してほしいものだ。また、その後の復旧が少しでも早く進むことを心から願う。