国際生物多様性年の幕開け

今年は、生物多様性にとって、歴史的な年である。まず、国連が定めた国際生物多様性年である(→EICネットの解説)。「国際生物多様性の日」(5月22日)に、「世界の生物多様性概況第3版」(Global Biodiversity Outlook 3:GBO3)が発表される。GBO3では、「生物多様性の損失を2010年までに有意に減少させる」という「2010年目標」の達成度が評価される。残念ながら、「ほとんど達成できなかった」という評価が下される見通しである。このため、10月に名古屋市で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)では、「ポスト2010年目標」が決められる。日本政府は昨年末に、生物多様性条約に対して、日本からの提案を送った。
「ポスト2010年目標」と関連して重要なのが、目標を評価する指標である。目標が達成せたのか、それともされなかったのか、それを科学的に評価する指標がなければ、目標は掛け声だけに終わってしまう。ここは、科学者の出番である。
3月21-24日に名古屋大学トヨタホールで開催される「生物多様性条約COP10プレコンファレンス」では、ポスト2010年目標を評価する指標について、世界の科学者が集まって議論し、提案をまとめる。
年末・年始は、この「生物多様性条約COP10プレコンファレンス」のプログラムを確定するために、関係者とメールのやりとりをした。近日中に、国際準備委員がテレコン(電話会議)で連絡をとりあい、プログラムを確定する予定である。その結論は、このブログで再度紹介したい。
2月21-25日には、カリフォルニア州シロマで、GEO BON Big Meetingが開催される。GEO BONとは、GEO(地球観測に関する政府間会合)の下に2008年に設置された生物多様性観測ネットワーク(Biodiversity Observation Network)である。私はオーストラリア国立博物館のDan Faithとともに、GEO BON Genetics Working Groupの共同議長をつとめており、アシロマ会議にも参加する。
シロマ会議に先立ち、2月6-7日には、国際遺伝的多様性観測に関するシンポジウム・ワークショップを九大で開催する。年末・年始は、このための連絡調整にも忙しかった。このプログラムももうすぐ確定するので、その時点で紹介したい。
シロマ会議に向けて、”Global genetic diversity assessments in the century of genome science”という英文の総説を書き上げた。いま、共著者の手で改訂作業が行われており、近日中にCurrent Opinion in Environmental Science 誌に投稿する予定である。
今日は、滞在先の屋久島で、「地球の生き物をなぜ守るのか?」という原稿を書き上げた。3月20日に開催される日本生態学会公開講演会で配布する「地球の生き物をなぜ守るのか?」という本のまとめの章である。他の講演者の方々は、昨秋に原稿を書き上げられており、本の編集作業が大詰めを迎えている。ここで私が原稿を書き上げなければ、講演会に本が間に合わない。書きかけの原稿をかかえてずいぶん空を飛んだ。今日の午前中、屋久島でまとまった時間がとれたので、世界自然遺産センター2階の部屋でやっと書き上げた。
今年は10月のCOP10まで、生物多様性関連の仕事で忙しい年になりそうだ。