カンボジア初日

昨日は、ゴム庁長官・幹部、林野庁長官・幹部に対して、グローバルCOEプロジェクトに関してプレゼンテーションをした。林野庁長官からはとくに好意的な返答をいただき、夜は会食にお招きいただいた。カンボジアの方々は好意的で親切だと伺っていたが、権威を表に出さない誠実な対応は想像をこえるものがあった。
お二人の長官とも若く、まだ40台かと思う。おそらくポルポト政権下で年配の指導者が命を落とされたために、政府全体が若い世代でになわれているのだろう。この国のために、少しでも役に立ちたいという思いを強くした。
午後は、プノンペンから車で1時間ほど北に走り、Svay Bakao community forestryにある調査地を訪問した。住民の共同管理で樹高10m程度の若い二次林が維持されている。Community forestryを始める前は、森林が衰退していたそうだ。実際に、周囲の土地のほとんどは、農地に転用されている。今となっては、プノンペン近郊で森林の状態を観察できる貴重な場所だ。
九大演習林のチームは、この場所で水文観測を実施している。また、森林の変化を継続調査するために8つのプロット(50mx50m方形区)が設けられ、DBHや樹高のなどの測定が行われている。しかし、現地名だけで記録され、学名が決まっていない樹木が少なくない。まずは、これらの樹木の同定をする作業が必要だ。
次回は、プロット内の全樹種について写真を撮り、標本を作り、DNA同定ができるようにシリカゲル乾燥資料を取ろうと思う。私の知識で科や属が同定できる樹木もあるが、花も実もない場合には、科すらわからないものも少なくない。このような場合には、DNA配列から科や属を同定する方法が有効だ。
地形はまったく平坦なので、調査はきわめて容易である。土壌は砂質。地形や土壌の均質性が高いにもかかわらず、樹種の多様性はかなり高い。樹種の多様性の維持機構を研究するうえでは、非常に興味深い場所だと思う。
写真は、community forestryの管理小屋のそばに生えていたショウガ科の植物。包葉が赤く着色しており、おそらくチョウを誘引しているのではないかと思うが、あるいはハナバチ媒かもしれない。花は雌雄に分かれているようで、唇形の花に加え、花序の基部に雌花らしきものがある。観賞用にも使えそうな植物である。周囲を探したが、一株しかなかった。きっと、絶滅危惧種だろう。