生物多様性の国メキシコ

yahara2005-11-10

3日間のフィールドワークを終えて、DIVERSITAS(生物多様性国際研究機構)第一回国際会議に突入。今夜は、歓迎会(WELCOME PARTY)に出た。
思えば、DIVERSITAS第一回国際会議をこの地メキシコで開催したのは、もっともなことだと思う。メキシコは、熱帯雨林から砂漠までの植生の多様性を持ち、著しく高い種多様性を擁する国である。しかも、人々の暮らしが、多くの生き物とともにある。
写真は、山道でであった家族が、トラックに花を満載して家路につくとき、トラックに積まれた花束を撮らせてもらった記録である。写真に写っているピンクの花は、Stevia jorullensisだ。一家の主のおじさんは、今夜のお祭りでこの花を教会の祭壇に捧げるのだと、楽しそうに語っていた。また、胃薬として、苦いがよく効くそうだ。このエピソードが物語るように、メキシコの山で暮らす人たちは、いまでも多くの生き物を知り、自然の恵みとともに暮らしている。
メキシコの山はと言えば、そこかしこに牛がいて、林床は牛糞だらけである。幸い、ステビア属の植物は、牛が食べない。そのため、メキシコ中の、山地カシ林の林床には、約100種のステビアが、白や紫の花をつけて、群生している。
もし、この地メキシコで、経済発展とともに人々の暮らしが山から離れ、林から牛が消え、アンダーユースの状況が生じれば、日本と同様に、(あるいはそれ以上に)、二次的自然の消失が進み、ステビアを含む多くの植物が姿を消すだろう。
このような問題を抱えながら、急ピッチで経済発展を遂げているこの地メキシコでは、生物多様性というキーワードは、とても重い意味を持っている。
DIVERSITAS第一回国際会議は、生物多様性保全と人間活動の両立という今日的なテーマを正面に見据えて、明日から開幕する。このテーマこそ、メキシコが直面するテーマであり、実は日本が直面しているテーマでもある。しかし、メキシコと違って、このテーマの重要性に気づいている人は、日本ではまだまだ少ないと思う。
さて、明日からは、世界各国からの参加者とともに、3日間のDIVERSITAS第一回国際会議に出席する。充実した3日間となる予感がして、楽しみである。